野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

解体の音楽

連日、日本センチュリー交響楽団との仕事が続いております。今日も、センチュリー響から来た仕事で、大阪の前田文化で、住居解体作業と音楽がセッションするコンサート。この話が、日本センチュリー響に来て、野村とセンチュリー響のヴァイオリニスト小川和代さんが出演することに。そして、本日、パーカッショニストの安永早絵子さんも参加して下さいました。

解体作業は、第1楽章として奥の6畳間の床を撤去する作業。第2楽章として、次の部屋の床を撤去する作業。第3楽章として、コンクリートをドリルでガガガガガガガガとやる作業、第4楽章として、外の壁をぶち抜いて壊す作業でした。

簡単な構成と方針を決めて、「タイスの瞑想曲」を演奏する場面以外は、完全に即興です。しかし、これまで数々のコミュニティ・プログラムに参加してきた小川さんは、即興演奏もへっちゃらになっておられて、こんなに何も決まっていない状況でも、のびのびと楽しく演奏されていました。4年前に、日本センチュリー交響楽団のコミュニティプログラムディレクターに就任した時に、まさか、こんな日が来るなんて、想像もできませんでした。昨日、バリガムランと野村の新曲をリハーサルしてくれたヴァイオリニストの巖埼さん。今日は、解体作業と即興でセッションするヴァイオリニストの小川さん。この楽団は、なんと開かれた音楽家集団なのでしょう。

そして、センチュリーとの仕事も多い打楽器奏者の安永早絵子さんが、是非参加したいと名乗りをあげて下さり、本当に楽しんで演奏をして下さりました。

そして、解体パフォーマーの皆さんが、素晴らしかった。やはり、リアルな作業というのは、そして、実際に住居が解体されていく現場を見ることは、本当に分かってはいたのですが、衝撃でした。どんな演劇やダンスの音楽をしている時にも味わったことがない感覚でありました。安永さん曰く、本当に色々な感情がわき上がってきたコンサートでした。解体、かっこよかったなーー。

そして、40名ほどで満席になる想定の会場に、100名ものお客様が詰めかけ、溢れんばかりの熱気であったことも、大変感謝であります。今年の最初の演奏会が、これでした。今までの49年の人生で一度も体験したことのないような演奏会で幕開けできたこと。貴重な機会をありがとうございました。

アンコールで観客の皆さんと一緒に演奏し、解体し、終演後も、解体現場の中で、飲食をともにでき、良い時間でした。ここは、一体どこなのだろう、見たことのない光景でありました。