野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

うたう図書館 千秋楽

「うたう図書館」の本番の日がやってきた。図書館という場所で、人々が集い、あり得ないシチュエーションで歌う。お客さんからクレームが出るだろうか?どんな雰囲気になるだろうか?

午前中は、愛知大学の学生たちとのミーティング。6人の学生たちと、流れや場所、楽器や機材の確認をして、進行表をつくっていく。

午後1時に最後のワークショップ。図書館内でリハーサルはできないので、文化会館の多目的ホールでのリハーサル。ここから参加の人もいっぱいいる。人口6万人の田原市で100人の出演者を集めようという試みは、人口70万人の足立区で1010人の出演者を集めるのと同じ程度に大変だったと思うが、なんとか70名ほどのメンバーが集まる。1時間半かけて、最初から最後までを順番にリハーサル。

午後3時、定刻にスタート。鍵盤ハーモニカ・イントロダクションで始めてのち、福寿苑のお年寄りたちの声の録音を聴いて、「田原の本まつり」の声のアンサンブルを練習し、観客も出演者も混ざって、100名以上で大合唱。その後、中学生たちの朗読アンサンブルは、非常に緊張して初々しく進み、校歌も歌詞を忘れながら、楽しく進み、「田原の図書祭り」で児童書コーナーへ移動。図書館の中で、カーニバルか神輿のようなパレードが行われることになるとは。中学生の遊び感覚いっぱいの「たはら」合唱。トーンチャイムによる「かくれんぼ」を経て、「田原の図書まつり」を楽器も加えての演奏で、再び移動して、「タイトルズ」。本のタイトルで構成される歌。その後、ジングルベルのメロディーにのせて「タイトルズ」の本を歌う。「田原の図書まつり」で移動し、3グループでの読書アンサンブルをして、炭坑節の替え歌で「図書節」。振付けもしながら、階段下へ移動。階段には中学生たちがスタンバイし、「愚痴のうた」を歌う。中学生の愚痴が盛り込まれたうたで、その歌に関連する書籍を見せながらの2部合唱。中学生たちの思いの詰まった歌唱。最後に「たっはらベルのカノン」で、ハンドベルトーンチャイムの音が響き渡り、たーはーらーの歌声が響く。「100本じめ」で、本をパタンパタンとドミノのように閉じた後に、ヨー 「ほん」と本が閉じる。

城崎から片道5時間かけて日帰りで見にきてくれた遠方からの来場者もあり、嬉しい。打ち上げ、あとかたづけ、同時開催の「あそぶ図書館」の展示も面白く楽しみ、撤収後、スタッフ打ち上げの後、ホテルへ。うーむ。この「うたう図書館」は何と形容して良いのでしょうか?もはや現代音楽でも、現代アートでもないのかもしれない、とさえ思います。少なくとも、そういうカテゴリーの枠組みを越えた何かが実現してしまった。「たっはらベルのカノン」は、ほぼ「パッヘルベルのカノン」で、「図書節」は「炭坑節」で、「田原の図書まつり」は「タイの村祭り」で、校歌すら歌ってしまった。そのまんまやん!とツッコミが入るような内容も多かった。しかし、オリジナルのまんまでもなく、微妙に変えていることで、違和感や新鮮さを生み出していて、ある意味、これまで色々な新作を生み出してきた野村にとって、逆に新鮮というか、未体験ゾーンに突入した感覚があります。おそらく、5年後、10年後になった時に、この「うたう図書館」は、歴史のターニングポイントとして語られるかもしれない、と予感しましたが、まだ、これが何なのか?どこに繋がっていくのか?は、分かりません。2018年の年末になると、きっと、少し、そのことが分かってくるかもしれません。

参加のみなさん、スタッフのみなさん、図書館のみなさん、おつかれさまでした。そして、ありがとう。