野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ナーモータサー

タイのスリン県のジークデー村におります。スリンの町中から70キロほど来たところ。今朝は、もの凄い日差しで暑くて目が覚めました。昨日の霧が嘘のよう。こちらに来て4日目で、初の洗濯。洗濯をし終えると、曇ってきて、怪しい空模様。

朝食後、ケーン(タイ東北部やラオスなどの笙)を吹かせてもらう。2オクターブの音が16本の竹に振り分けられている。Gを基音とするケーンでは、真ん中の音域のFが重複している。演奏の仕方などを、ヨードさんに教えてもらう。ヨードさんから、子どもが染め物をしたデザインの手提げカバンをもらう。

国境近くの遺跡Prasat Ta Muean Thomに行く。この遺跡は、タイとカンボジアの国境上にあり、どちらの国だけに属するものではないので、それぞれの軍人さんが警護にあたっている。1560年頃の遺跡。遺跡のそばでも、軍隊のキャンプを隠すためのエリアがあり、そこは撮影禁止。しかし、遺跡の中では、撮影の許可が得られ、野村の鍵ハモの即興を、サンガットさんが撮影。その後、タイとカンボジアの軍人さんと一緒に写真撮影。

続いて、病院の遺跡がある。そこで、サンガットさんの提案で、野村にインタビュー。インタビュー映像を撮影し、昨日、今日で撮影した映像と合わせて使うとのこと。

昼食後、カンボジアとの国境に行き、国境で記念撮影。国境の近くに立ち入り禁止地域があり、今、地雷の撤去作業をしているとのこと。本当に地雷は、まだまだ残っているようだ。

国境の近くのマーケットで買い物。日本をはじめとする外国から流れてきたものがいっぱい売られている。そこで、今日のワークショップで楽器として使えそうな金属ボウル、ケーンなどを購入。野村個人用のケーンも、ヨードさんが音の良い物を選んでくれる。

ここで、ヤーさん、サンガットさんとお別れ。ヤーさんは、ラオス国境近くに会議に参加しに行くのだ。また、来週には会えるので、しばしのお別れ。

ヨードさんの家に戻り、子どもたちとのワークショップ。今日は25人ほど参加。「水を飲む、ドゥムナム、学校、ロンリエン」の続きの歌を作る。今日の歌詞は「本、ナンスー」になった。337拍子のリズムを、子どもたちは上達していて、今日は楽器の加わる順番などアレンジが少しできた。また、今日から参加する子どもには、ぼくから教えずに、他の子どもから教えてもらうようにした。「1234」の指揮も、アンサンブルが昨日よりもよくなっている。また、楽器の種類も増えて、音色も豊かに。今日、初めての試みは、お経を唱えてもらったこと。「ナーモータサー、パカワトー、アラハトー、サンマー、サンプタサー」と子どもたちは暗唱していた。このリズムで合奏をした。シンコペーションの野村好みのリズムユニゾン

日が暮れて、ゲーさん、リャンさんも帰って行った。ここ数日をともにした仲間が、次々に帰っていく。通訳をしてくれたマルさんも帰っていき、ついに、ヨードさんの家族と、チャンさんと、野村だけになった。通訳を失ったぼくらは、ボディランゲージと片言のタイ語と日本語で、語り合った。ヨードさんは、英語もほとんど喋らないが、英単語が入るだけでも、少し意思疎通もできる。

「かずえつこと 即興のための50のエテュード」41曲目の「ナーモータサー」を作曲し、就寝。