野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

カオレーム山の山頂で

ニワトリの鳴き声で起きるジークデー村での3日目。朝7時、雨が降って湿った空気で、霧がかかっている。これは、冬だ、とタイ人は大喜び。Tシャツでいられる気候だが、少し涼しいのが嬉しいようだ。車で、今いるパノムドムラック郡から、ガープチューン郡に移動。この辺は、ずっとカンボジアの国境が近いとのこと。スリンは、タイの中でも最も砂漠化が進んでいるとのことで、日本の環境系NGOの人が、ずっと植林を続けてきた歴史もあり、お礼に、ゾウが2頭寄贈され、今は上野動物園にいるなど、日本との繋がりも深いらしい。ゴムの木、キャッサバ畑、さとうきび畑など、かつての熱帯雨林が切り開かれている。特に、キャッサバ畑は、大量の化学肥料を投与し、短期収穫を目指すので、スリンの住民の飲料水が汚染されるので、ヤーさんたちは、そうしたこともテーマに活動しているとのこと。

リヤオさんが、毎日、ボランティアに行っているお寺に着いたのは8時頃。声明は、シンコペーションのリズムだった。托鉢の食事をいただく。

その後、山登り。カオレーム山の山頂を目指して、山道を2.6キロハイキング。途中で、地雷を撤去した看板がある。この辺りは、カンボジア内戦時代に、カンボジアから避難してきた難民が、軍隊から身を守るために地雷を埋めたらしい。もう撤去されているから大丈夫とのこと。巨石が積み上げてあるところがあり、カンボジアから避難してきた人が防御のために積み上げたとか。戦火の足跡が、そこかしこにある。20年前の子ども時代、ここから70キロ先のスリンの町中でも、銃撃戦の音は聞こえたよ、とヤーさん。山を歩いているうちに、ヨードさんがアイディアを思いついた、と言い出し、今回のこうした様々な活動を展示したい、という。写真や映像や色んな形で、残そう。ちょうど、ここにドキュメンタリー映像の仕事もしているサンガットさんもいるし、と言う。大賛成と野村が言うと、大反対とサンガットさんが答える。「俺の仕事が増えるじゃないかー」と笑う。そんなつもりじゃないから、映像用のカメラ持ってきてないのに、スマホで急に撮影を始め、演出もしたりする。

山頂は、素晴らしい光景だった。12年前にインドネシアポンジョンに行った時も、凄かったけれども、ここからの景色も凄い。民家は全く見えない。ただただ、眼下に森林が続いている。あそこの山までは、タイ。その先はカンボジア。天気がよっては、シェムリアップの町も見える、とのこと。山の上で、みんなで草笛をやり始める。草笛の次は笹笛。山頂でのセッションの後、山を下りる途中で、面白い景色のところで、撮影タイム。ソムポムの木という船にする木の下でも演奏。

その後、オーガニック農業をする友人のところで、ランチと連れて行かれる。ネンムットという地域の「充足経済達人のラーニングセンター ルンナパー・ブンジャン」。池のほとりに、ハンモックも吊ってあるし、屋根のある憩いの場があり、インドネシアのジャムーみたいなグラッチャイという薬草ジュースをいただく。サモーという果実は苦みがあり、これを食べた後に水を飲むと、甘いのだ、と言う。ここの畑にあった金属製のジョウロが良い音がするので、楽器になる、ということで、買い物に行く。ショップの数m上につり下げられたジョウロを全て叩いて音を選ぶために、フォークリフトに乗って、チェックし、購入する。変な買い物をする日本人の到来に、見物の人々ができる。

戻って後、4時半に子どもたちが集まり、「337拍子」の練習。「1234」でのトゥッティとソロの即興。歌作り「水を飲む ドゥムナム」の続きで、「学校 ロンリアン」をつくる。タイの歌を何か歌って欲しいので、頼むと「ゾウ」の歌を歌ってくれたので、これも練習した。昨日よりも、アンサンブルがよくなる。その後、高校生と、「水を飲む」と「ゾウ」を練習。

夕食後の打ち合わせ。16日のワークショップは、野村がリードするのでなく、高校生にリードしてもらったら?という野村の提案が受け入れられ、高校生がリードすることに。地元のリーダーが育っていくことも大切。17日はオフにして、20日には、美術のワークショップをすることに。連日、音楽ばかりでなく、ちょっと変化をつけていきたい。

「かずえつこと 即興のための50のエテュード」もついに40番。「なんまいだーほうれんそう」を作曲して、就寝。