野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

相撲と音楽と岩槻

さいたま市岩槻駅にて、JACSHA(日本相撲聞芸術作曲家協議会)作曲家の鶴見幸代さん、制作の里村真理さん、大相撲高砂部屋に所属行司の木村朝之助さんと合流。さいたま触れ太鼓隊の植森さん、矢ケ崎さん、サトさんも来ている。みんなで車で、岩槻の釣上地区に伝わる「子ども古式土俵入り」の保存会の皆さんを訪ねる。今回は、古式土俵入りにおける行司と、大相撲における行司で、どんな共通点があるのか違いがあるのかを、確認し合う交流。祭文の時に軍配を右手に持つか、左手に持つか、などなど、様々な議論もあり面白い。また、「よーい、よいこら」というかけ声は、「良い子ら」という語源である、と保存会の方から説明。古式土俵入りの祭文と、大相撲の土俵祭りにおける方屋開口の共通点などもあり、興味は尽きない。

午後は、行司に関するワークショップ。定員20名がいっぱいになり、参加者は部屋いっぱいの30名。直前の告知だったが、参加者が集まってよかった。植森さん、皆さん、ありがとう。朝之助さんは、装束で登場。ありがたい。まずは、「仕切りと裁き」のワークショップ。行司さんの所作、声は、実際にやってみると、かなり複雑。最初の名乗りから、難しい。そして、倍音の出る素晴らしき声。力士が蹲踞した後、行司の「かまえて」の声から、力士が仕切るところも、絶妙。力士と行司が息を合わせて、動きのアンサンブルをしていたなんて、今まで意識して見ていなかった。また、「まったなし」の後、「てをついて」から、軍配を返して、「はっきよい」にいくまでの流れも、本当に美しく、実際にやってみると、本当に腑に落ちる。力士役や行司役も体験してみるワークショップ。「よい、はっきよい、よい」や、「のこった、のこった、のこった」を、朝之助さんの後に続いて、みんなで声をあげてみるのも楽しい。「勝負あり」から勝ち名乗りをあげるところまで、全て、実際にやって、はや1時間半。時の流れは速い。最後に、まわし待ったのやり方「まわしだまわしだ」なども伝授していただく。記念写真の後、朝之助さんお着替えの後、相撲文字のお習字講座。もっとも基本の「山」、「川」、「海」を教えていただく。とにかく、太く書くこと。隙間を作らない(客席が満席になるという験をかつぐ)。書道ではかすれるのが味になったりするが、とにかく塗りつぶす。などなどのコツを教わる。「花」と「錦」まではたどり着かず。3時間の濃密なワークショップが終了。

その後、会場をうつして、トークショー。JACSHA(日本相撲聞芸術作曲家協議会)の3人の作曲家(鶴見幸代、樅山智子、野村誠)と木村朝之助さんによるトーク。お話の中で、印象的だったのが、「行司とは、間に入って調整する仕事」という言葉。力士と力士の間に入るだけではなく、時には、土俵と観客の間をつなぐ仕事(場内アナウンス、番付の文字)、冠婚葬祭の運営も親方と力士の間に入って調整したりもする。ある意味、コーディネーターなのだ。貴重なお話をいっぱい伺うことができ、感激。

そして、懇親会で、楽しく、飲み食べ語り合い、朝之助さん、触れ太鼓隊、そして、一般参加の方々との相撲と音楽の濃密な時間が終わった。相撲から学びたいこと、学べることが、まだまだいっぱいあり、楽しくて仕方がない。

ホテルに戻り、「かずえつこと 即興のための50のエテュード」のno.3を作曲。今日はアルファベットの26文字と箏の13の糸を対応させて創作。送って後、眠る。