野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

友、遠方より来るあり(イギリスのレスター)

イギリスのレスターから、エレクトロ・アコースティック・ミュージックの作曲家John RichardsとLeigh Landyが訪ねてくる。二人とも、明日から名古屋で電子音楽の会議に出席するのだが、たった一日だけを使って、わざわざ京都まで会いに来てくれる。有り難い限り。ジョンは、23年前にヨークで会って以来の親友。94年にヨーク大学のキャンパスで出会い、意気投合した仲間の一人。彼は、野村作品「でしでしでし」のイギリス初演のメンバーであり、さらに、野村の作曲した子どものための作品の初演も見ているし、さらには、神戸の震災のためのコンサートにも出演してくれたし、さらには、ヒュー・ナンキヴェルらと、ハダスフィールドやリーズで行ったコンサートにも参加してくれた。94−95年の1年間に彼と色々音楽をしたり語り合ったことを、今でも鮮明に覚えている。彼も今でも23年前の体験を鮮明に覚えていてくれる。ジョンは、電子音楽を大学院で研究したが、それを彼の好きな即興やワークショップなどの世界と繋げる方法を模索し、現在のDirty Electronicsの活動にいたっている。「この前も大学の学生に、マコトのテレビ番組見せたんだ」と嬉しそうに語るジョン。そして、ジョンの大学でのボスであるリーとは、やはり23年前に出会っていて、彼が当時ウェイクフィールドのBretton Hallという大学で教えていた頃、わざわざ彼のオフィスを訪ねていって、語り合った。あれから23年経っているのが、リーは全然老け込んでいなくって、相変わらず、アクティブだった。大学教育をもっと自由で面白くするんだ、国際交流のネットワークを広げるんだ、ずっと同じところでとどまるんじゃなくって、常に驚きを求めていきたいんだ、と23年前と同じテンションで語る。こういう友人に会えると本当に嬉しい。

龍安寺を見たいと言うので、龍安寺へ。禅について、ケージについて、現代音楽について、日本の文化について、いろいろ語り続ける。龍安寺の石庭を楽しんだ後に、よりによって、パチンコ屋に入ってみたい、とリー。あの喧噪の中に入り、「メルツバウが日本から出てくる理由が、やっとわかった」とご満悦。

我が家に戻って後は、延々と音楽交流。まずは、ジョンのリクエストで、「あいのて」の番組、鍵ハモ、「動物との音楽」、「瓦の音楽」などを見てもらい、ジョンの新しい簡易電子楽器を見せてもらったり、簡単なノイズ発生装置を見せてもらったり。そして、お互いのCDや本などを交換。深夜まで語り続ける。「これは、札幌国際芸術祭でホリオカンタと一緒にやる時に使う楽器、これは、札幌でのワークショップでやる楽器」と色々見せてくれて、ぼくもそれで即興させてもらったり、楽し過ぎる。

初めて日本に来たときは、勅使河原三郎のダンスの音楽をし、ヒルトンホテルに泊まったジョンは、今日は、我が家でふとんに寝てもらう。深夜まで、音楽談義ができることを嬉しく思うとともに、23年前に20代だったぼくらが、ヨークで語り合っていたのと、同じだなぁ、と思って、不思議な気持ちになる。「23年経つけど、同じような感じだね」とい言うと、「同じだけど、当時よりも随分とお互い成果をあげてるよ」とジョンは嬉しそうに言う。

そもそも、ジョンは、Dirty Electronics名義で活動しているが、Dirtyとつけるところが、まるで、だじゃれの「だ」のようであり、またまた親近感を覚えてしまう。

9月10日にカーサ・モーツァルトでやるコンサートに、ジョンも飛び入りで参加してくれることになった。「テレビで黄色の衣装の眼鏡の(=片岡祐介さん)と共演できるのか?」とジョンは、興奮。ヨーク大学で博士号をとったジョンは、もう一人のヨークで博士号をとった音楽家エンリコ・ベルテッリとも9月10日に出会うことになる。世界は狭いなぁ。