野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ことばのはじまり/ウミ下着

ディディエ・ガラスがフランスから来日した。3月19日、20日に、東京公演するのです(関東の皆さん、駒場アゴラ劇場という小さな会場なので、今はまだありますが、おそらく直前に突如チケットが完売してしまうと思われます。お早めにお申し込みを!)。

2年前にディディエが作・演出した「ことばのはじまり」を再演します。音楽は、野村+やぶくみこさん。出演は、オーディションで選ばれた5名で、きたまり(ダンサー)、森川弘和(ダンサー)、坂口修一(俳優)、小島功義(和太鼓奏者)、松尾恵美(ダンサー)という5人。

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再演にあたり、ディディエは作品の前半部分を大きく変更した新バージョンをつくってきて、さっそく濃密なリハーサル。ここでは、日本語もフランス語も英語もなく、この作品の中で生まれてきた不思議な言葉(または言葉以前)によるコミュニケーションが行われます。だから、子どもも大人も、何語を話す人も観賞できる舞台です。演劇のようでもあり、ダンスのようでもあり、生演奏なので、音楽でもある。そして、意味を越えて喜怒哀楽がわいてきます。稽古場は笑いが堪えません。

その後、博多へ移動する前に、中西ちさとさん主宰の「ウミ下着」の公演、「いつか みんな なかったことに」を観賞。3月11日をテーマにしたドキュメンタリー・ダンス作品で、誠実な作品だった。大震災を前に、ダンスに無力感を覚えた人の話。無力感と無力は違う。たった一つの小さな芸術表現は、微力ではあるが、無力ではない。でも、大きな力を前に、無力感を感じてしまう。無力ではないのに、無力感を感じてしまう。でも、今までダンスを作ったことがなかった人が、初めてダンスをつくった。言葉を発したことがない人が、初めて言葉を発した。誰かが、この世に生まれてきた。そのことを、ぼくは祝福したいし、それは微力ではあるが、無力ではない。その微力な誕生に、創造の可能性を、なかったことにしない、そうした思いを持って、新幹線に乗って、博多へ。屋台でラーメンを食べることもなく、チェックインと入浴後、就寝。

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