野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

きく芸術ー相撲聞芸術の作曲家たち

京都を朝出て、埼玉へ。さいたまトリエンナーレ2016の準備に来ています。トリエンナーレのディレクターの三浦さんに埼玉に関して色々教わり、見沼の女体神社を見学したり、見沼田んぼ龍神伝説や、治水のために伊原ヤソベエが龍神と取引した言い伝えなどを知る。JACSHA(=日本相撲聞芸術作曲家協議会)での次年度のトリエンナーレのためのプロジェクトに向けて、3人の作曲家(野村誠、樅山智子、鶴見幸代)の最近の活動について情報交換をする濃厚な作曲フォーラム。野村の千住で行った「千住の1010人」、やぶくみこさん+淡路島アートセンターと共同で展開中の「瓦の音楽」、そして、日本センチュリー交響楽団と行っているコミュニティプログラムについてプレゼン。樅山さんのインドネシアのボロブドゥールでの共同作曲、南アフリカでのプロジェクト、福井での地元の人々を巻き込んだサイトスペシフィックなコミュニティ音楽ジャーニー、ヒマラヤの山の上での岩の音を聴いての共同作曲など、本当に驚くべき素晴らしき愛しい音楽体験を、写真や音源や言葉から想像する。そして、鶴見さんのマカオでの世界中の合唱団の集まるフォーラムでの体験談や沖縄での民謡団体をつなぐ新たな動き、さらには相撲の太鼓などを題材に作曲した太棹三味線とチェロのための新作を聴く。本当に濃い時間。作曲家は作品をつくるだけでなく、自分たちが世界をどのように「きいて」いるのか?ということを伝えていく必要があるのでは、と語り合う。「耳を開く」とはどういうことか?「心を開く」とはどういうことか?地球の警鐘を「きく」耳を持たないグローバル資本主義経済。市民の訴えを「きく」耳を持たない政治家。自分の身体が訴える不調を「きく」耳を持てたなら、市民の声を「きく」耳を持てたならば、樹々の言葉を「きく」耳を持つならば、世界は着実に変われるはずなのです。この「きく」は、聴覚にだけ限ったものではない、色々な感覚で「きく」ことができる。「きく芸術」を、少しずつでも提案していくこと。だから、ぼくらは、相撲から聞こえてくる音楽に耳を傾ける「相撲聞芸術」を作曲したいのです。