野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

哲学カフェオーケストラ庄内「今年もよろしく」

本日は、大阪です。豊中市と日本センチュリー交響楽団のプロジェクト「哲学カフェオーケストラ庄内」の2回目。ぼくは、昨年4月より、日本センチュリー交響楽団のコミュニティプログラムディレクターをしており、オーケストラのコミュニティプログラムの開発/オーケストラの可能性の開拓、という任務を担っています。

そして、昨年、若者との音楽創作による就労支援プロジェクト「The Work」、ミニコンサート+ワークショップの「町に紡ぐ音楽」を開催しました。そして現在進行中なのが、お喋りと楽器で交流する集い「哲学カフェオーケストラ庄内」です。「哲学カフェオーケストラ庄内」は、時に哲学し、時に雑談し、時にオーケストラ体験をし、時に作曲の醍醐味を味わい、時に遊び、時に笑う交流の場です。クラシック音楽やオーケストラの知識に詳しい人だけが集う場ではありません。クラシックやオーケストラの門外漢の視点は大歓迎で、日常からの眼差しでオーケストラを見つめ直す場になります。子どもの視点、アマチュアの素朴な着想が、プロの音楽家にとって目から鱗であることも多く、そうした立場や趣味の違った人々が一同に会して音楽をする21世紀の日本における「交響/公共楽団」の新形態を試行錯誤する意欲的な試みなのです。

豊中市の職員さん、大阪音大民族音楽学(中国音楽)の先生、幼児音楽教室の先生、ブラスバンド小学生、日本語教育や図書館の廃棄本のリサイクルに携わってきたNPOの方々、大阪大学の哲学の先生、大人になってから突然サックスを始めた方、三線を演奏する方など様々な音楽愛好家の方々、そしてセンチュリー交響楽団のオーケストラ楽団員、音大生などなど、といった方々が、集っている非常にユニークな場です。こうした場を育んでいくと、庄内からオーケストラと市民の関わり合いの新しい形態が生まるかもしれません。そんな予感をさせられる愛おしい集いなのです。

さて、本日の前半は、オーケストラ楽団員によるワークショップでした。演奏のプロである楽団員の方々は、ワークショップと言っても、演奏技術を教えるレッスンが中心でしょうが、本日は、楽譜も使わずに、オーケストラ音楽の魅力を体感するオリジナルのワークショップをつくってきてくれました。グレゴリオ聖歌の「怒りの日」のメロディーを覚えて、それを変奏する、という初心者には難しそうな題材です。これを、楽譜を使わずに体感/体験する試みです。自分たちが不慣れな新しい領域(ワークショップ)にチャレンジするのは、勇気がいるし、大変なことだと思うのですが、果敢に挑まれていました。この場にいること、日本のオーケストラにおけるワークショップ黎明期に遭遇できていることは、実は貴重な体験です。

ということで、ぼくの仕事は、後半。オーケストラ楽団員によるワークショップを受けて、「怒りの日」のメロディーに基づく即興的な合奏。さらに、オーケストラ所有の初心者向けの貸し出しヴァイオリンの体験演奏、手づくりヴァイオリンキットにより製作したヴァイオリンと超高級ヴァイオリンの音色の聴き比べ(手づくりヴァイオリンもユニークな音色がしていて素晴らしかった)、さらには「怒りの日」の最初のフレーズに歌詞をつくり、「今年もよろしく」となり、「今年もよろしく」のリズムを変えて、変奏曲を作りました。


http://wind.ap.teacup.com/applet/guqin/20150109/archive
http://d.hatena.ne.jp/ongakugaku/20150109

次回のワークショップ(2月13日)が終わったら、昨年7月に演奏した「日本センチュリー交響楽団のテーマ(第1稿)」を改訂して、「哲学カフェオーケストラ庄内」で出たアイディアを盛り込んだ「日本センチュリー交響楽団のテーマ(第2稿)」としてバージョンアップする予定です。「日本センチュリー交響楽団のテーマ」という曲は、ワークショップを行う度に、そこで行われたことが思い出のように埋め込まれていく曲として、進化していくことになると思います。「日本センチュリー交響楽団のテーマ ver.2」は、3月14日に庄内で発表されます。