野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

芸術は役に立つ

昨夜、友人が泊まっていきました。深夜に言っていた話が印象的だったので、メモ。

「芸術は役に立たない」という芸術家が多過ぎる。その人たちは、どうしてそんなことを言うのか。そんなことばかり言うから、芸術に予算など割かなくても良いのでは、と考える人が出てくる。「芸術は役に立たない」と言う芸術家は、欺瞞だと思う。過去の芸術に対する敬意はないのか?過去の芸術があったからこそ、今、自分が芸術をする恩恵を受けている。その意味だけでも、大きく役に立っている。「芸術が役に立つ」と芸術家が言うのを聞いたのは、マコトさんが初めてだ。それくらい、「芸術は役に立たない」と疑いもなく言う芸術家が多い。それは何なのか?

ぼく自身のことで言えば、「自分の芸術作品がどのように役立つか」を具体的にイメージして創作することなど、まずありません。また、役立つことを意図して創作することも、しません。しかし、そのことは芸術が「役立たない」というのとは、全く話が違います。「役立つ芸術」を意図すると、かえって芸術作品がつまらなくなり、役にも立たなければ面白くもなくなると思います。ですから、創作過程においては、「芸術を役立てる」などということは、考えないようにしている、ただ、それだけで、「芸術は役に立つか」と問われれば、それだけの可能性は十分にあるので、役に立つと答えます。

芸術作品は、様々な解釈ができるものが多いです。つまり、そこからどのような恩恵を受けるかについても、鑑賞者によって、様々です。ですから、「芸術を、どう役に立てるか?」は、鑑賞する側、受け手の問題、になります。よって、「芸術は全ての人に均等に同程度に役に立つか?」と問われれば、そんな訳はないですが、「芸術は、それぞれの人によって、違った程度に、違ったアプローチで、直接/間接的に役に立つ」となるのでしょう。何にしても、役立たないと断言されて、不要論がまかり通っては困るので、一応、わざわざ言葉にするのも野暮なくらいのことですが、敢えて書いてみました。

ということで、本日は、「京阪沿線46駅の音楽」の残りの9駅を、ワークショップの音源を聞いてメモ書きをして、46駅の叩き台はできました。コンサートは12月23日です。11月は、こうして終わっていきました。