野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

さじ加減

「砂連尾÷野村誠」の3日目、千秋楽です。

本日のアフタートークのゲストは、上田假奈代さん。砂連尾さんと野村は、2時間の公演を終えて、言うべきことは作品で十分言っているので、それほど語らなくてもいいかと思ってトークに登壇しているわけですが、この詩人と言葉を交わし始めるや否や、いきなり核心にディープな世界に入り込み、アフタートークだけで1時間という濃厚な時間になりました。

結局、私とあなたの間の境界線って、何じゃらほい、ってことになりまして、もっと、割込(÷)ありなんじゃないの?それが、コラボレーションであり、シェアする世界で。インドネシアに行くと、もっと介入する。もっと人と人の距離が近い。釜ヶ崎もそうかもしれない。個人主義著作権、個人というアイデンティティを守りつつ、他者との境界線を明確に線引きする。でも、砂連尾さんは、「ぼくは野村くんであり、薮さんでもある」と大胆に言う。ぼくと砂連尾さんの境界線って、何だ?ぼくは、野村だと思っていたのに、砂連尾なのか?じゃあ、この舞台の演出は誰がやってる?余計な口出しするのか、しないのか?過干渉なのか、お節介なのか?

そんな話をして、ふと「砂連尾÷野村誠」のチラシのデザインを思い出した。お互いの境界を越えて割り込み合う関係には、常に『さじ加減』が重要だ。あのチラシは、きっとそのことを言っていたのだ、と思った。そして、ぼく達はこれからも、もっともっと「÷」芸術を提唱していくことになるだろうけれども、そこでも『さじ加減』が大切になっていくのだろう。『さじ加減』という微妙であやふやな領域のことを、心に刻んだ。

2時間の公演+1時間のトークにお付き合いいただいたお客さんの皆様、本当にありがとうございました。

そして、素晴らしい照明の藤原さん、調律の上野さん、音響の薮さん、東京から駆けつけてくれた映像の上田くん、写真の杉本さん、愛知から駆けつけてくれたコーディネーターの吉野さん、スタッフの皆様方、本当にありがとうございました。砂連尾理の新境地に、こうして一緒に立ち合っていただけたのが、何とも嬉しいです。

テキスタイルデザイナーの伊藤尚美さんが、ブログに公演のレポートを書いて下さっています。こちら
http://www.itonao.com/diary.html

そして、「復興ダンゴ」は、来週には、世田谷美術館で公演します。アイホールとは全く違う空間なので、また大きく作品の印象が変化する予感です。