野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

だじゃれ音楽とガムランの日

台風が逸れて行ってくれたので、予定通り東京へ出かける。先日、電話での事前収録で出演したJ-Waveのラジオ番組で、ぼくが「だじゃれ音楽」について語ったのがオンエアされたはずだが、その頃は新幹線の車中で睡眠中。ふと目が覚めると東京駅。山手線、常磐線と乗り換えて、無事、北千住駅で降りて、テクテクと歩いて芸大千住キャンパスに到着。第7ホールには、ガムランが並べられている。スタッフのみんなー、搬入お疲れさまです。

ということで、今日からガムラン。「だじゃれ音楽研究会」のメンバーは、初ガムランとは思えないくらいガムランに馴染んでいくのが早い。何せ2年前に最初に取り組んだのが、お風呂のお湯で演奏すること。お湯を演奏するのは容易ではない。あれを最初に経験しているので、ガムランに戸惑うこともない。昨年、小学生と作った「トイレに行っといれ」曲をガムランで演奏すると、あの安易なだじゃれも高貴な響きで厳かに。「だじゃれ」の「だ」の部分をどうやって出すかが、ガムランでのポイントになりそうです。

その後、最重要レパートリーの一つ「ケロリン唱」をやってみると、これが完璧なのです。この人達、こんなにリズム感良かったっけ。しかも、そこにいるメンバーは音楽好きで集まった人ばかりではなく、だじゃれ好きで集まった人も結構いるのです。なのに、このリズム感。素晴らしい。でも、これはよく考えれば、当たり前で、「だじゃれ」は音韻連想なので、だじゃれ好きは音楽のセンスがあり、音楽好きはだじゃれが得意なはずなのです。つまり、「だじゃれ」と「音楽」という一見無縁なモノを結びつけたようで、実は「音楽」と「だじゃれ」は同義語に近いくらい似ているのです。だから、「だじゃれ」を入り口に入った人も、「音楽」を入り口に入った人も、「だじゃれ音楽」ができるようになるのです。さらに、「ケロリン唱」をガムランを演奏しながら歌いました。これが、また独特な面白さを醸し出していました。これは、11月10日のコンサートも楽しみです。

それにしても、ガムランの懐の深さは大したものです。ジャワの伝統音楽を知らずに試行錯誤する日本人達の表現が、このように名曲になる。そして、休憩にしても、みんなが演奏を続けてしまう楽器の魅力。

その後、芸大ガムランクラブのメンバーも加わって、「トイレに行っといれ」と「ケロリン唱」をやって後、「踊れ!ベートーヴェン」の前半部分を練習。今回は、前半部分とは言え、1996年に作曲したこの曲は、丹後、京都、貝塚、神戸、ジャカルタ、バンドゥン、ジョグジャカルタスラカルタ、奈良、大垣、滋賀などで上演されていますが、東京で奏でられるのは、今回が初めてなのです。

ガムランクラブの人々が曲を徐々に理解し始めたところで、ラジオ番組の取材でラッキィ池田さんが登場。ぼくも握りこぶしを握って「だじゃれ音楽」について力説し、芸大ガムランクラブの方々もインタビューに恥ずかしそうに応じてくれました。

で、取材後、芸大邦楽科に在籍の尺八奏者のリンズィさんが来てくれまして、こちらも11月のコンサートに出演。オーストラリアから留学中の尺八奏者は、即興の経験がないにも関わらず、ぼくのピアノと即興でセッションしてもらうと、大変素晴らしい。これは、きっとメメットとも素晴らしいセッションになることでしょう。

ということで、その後、千住のネットラジオ番組のための取材に答えて後、熊倉純子研究室で歓談の後、ホテルへ。

だじゃれ音楽とガムランの一日でした。

11月10日のコンサートは、既に予約が殺到して定員を超えているようです。来られる場合は、申込みの〆切が間近なので、お早めにお申し込み下さい。
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