野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

世界は変わる。それは賢者によってではなく、狂人によってだ。(メメット・チャイルル・スラマット)

本日、リハーサルを経て、野村誠千住だじゃれ音楽祭「メメットを藝大に歓迎だい!」を開催いたしました。プログラムは以下の通りです。

1)野村誠作曲「鍵ハモ・イントロダクション」
2)Memet Chairul Slamet「メメット歓迎曲」
3)野村誠+子ども達作曲「トイレにいっといれ」
4)野村誠+だじゃれ音楽研究会作曲「ケロリン唱」(2012)
5)野村誠作曲「踊れ!ベートーヴェン」(1996)

6)Memet Chairul Slamet「どういたしまして」(2013)
7)邦楽科大学院生とのセッション
8)Memet Chairul Slamet「Senju」(2013)

東京芸大東京音大ガムランチーム、アマチュアの音楽グループの域を越えた即興楽団「だじゃれ音楽研究会」、さらには東京芸大の邦楽科の大学院生(箏/三絃:松澤佑沙さん、鼓:小川実加子さん、尺八:リンズイさん)、そしてインドネシアから初来日の作曲家Memet Chairul Slamet、それに野村、というメンバーでした。

メメットが言っていた。マコトは狂っている。世界は変わるのは、頭のいい人がいるからじゃないんだ。狂った人がいるからなんだ。世界の発展は常に狂人によってもたらされるのだ。そして、マコトは狂人だ、と。実は、

それから、市民が集まって作っている「だじゃれ音楽研究会」は、芸大に出向いているお客さんだったはずなのですが、その人達が「メメットを芸大に歓迎」と言っているのも画期的です。いつの間にか彼らにとって、芸大はホームになり、お客さんを歓迎する立場になったことは、凄いと思います。そして、いつの間にか、凄い楽団になっていて、驚きです。

ぼく、ジャワガムランの響き好きだなぁ。久しぶりに「踊れ!ベートーヴェン」も演奏できて嬉しかったなぁ。この曲に再会できた。懐かしかったなぁ。

司会の熊倉純子さんから、「野村さんと言えば、無茶ぶり」と言われて、今回も、色々な無茶ぶりをしたと気付きました。しかし、無茶ぶりだとは思っていないんです。無茶というのは、不可能なこと、ほぼ不可能なことを指します。しかし、ぼくは関わっていただいている方々の潜在能力を信頼しておりまして、絶対できると信用していたからこそ、こうした『無茶』を言っているわけです。でも、それは無茶ではないんです。

とは言え、邦楽器の大学院生達とのセッションは、実際には、もっとも緊張を強いる形で、

メメット(笛)+松澤(箏)+野村(ピアノ)
メメット(笛)+小川(鼓)+野村(ピアノ)
メメット(笛)+リンズイ(尺八)+野村(ピアノ)

と3つやりました。よく考えれば(というか、よく考えなくても)、即興のステージの経験が多数ある二人の作曲家と一人でセッションするというのは、大変過酷な状況とも言えるわけです。それでも、この3人はフリーズすることなく、この場を受け入れて、体験していきました。強いなぁ、と思いました。ぼくの方は、この3人へのエールを送るつもりで演奏するのが、本当に心地よかったです。

メメットの新作「Senju」の世界初演も無事終わりました。終わっちゃうのは、ちょっと寂しいですし、こうやって色々な人々が出会えた場に、本当に感謝です。観客席の大半は地元の方々で、ガムラン関係者とか現代音楽関係者とかアート業界の人は少数派でした。この千住でのコンサートの場、好きです。そして、こういった企画を続けていくと、千住の観客達は、どんどん耳がこえて鑑賞力もますます高まっていく。なんだか、未来への希望を感じられるコンサートになって、嬉しかった。