野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

タイを贔屓したい、そして刺繍

API Fellowshipによるタイとインドネシアでの3ヶ月の調査活動の報告書を書く前に、過去のAPIの調査活動の資料を、読み返しております。ぼくと同様、タイとインドネシアで調査活動を行った樅山智子さんの報告を読むと、タイではフィールドリサーチに没頭し、当初予定していたアナンのグループ「コーファイ」などに作曲することが実現しないまま、次の調査地のインドネシアに移動し、インドネシアでは具体的なクリエーションに重点を置いて、活動を展開し、3つのパフォーマンスを実現した、ことを知ります。ということで、樅山さんの論文では、インドネシアでの活動が非常に具体的に報告されており、タイの内容が少ないわけです。でも、きっと、他にタイで色々な音楽のコラボレーションをしたAPI Fellowも過去にいたのだろう、と思って、過去10年間の報告書を見て行くと、どうもそうではない。インドネシアの音楽に関するものは非常に多いのですが、タイの音楽に関するものは、極めて少ないことに気づきました。ぼくの調査も、インドネシア2ヶ月、タイ1ヶ月なので、普通に書くとインドネシアが多くなり、タイが少なくなりそうです。極端な話、インドネシアでの内容だけで十分に論文が書ける。でも、この過去10年の文献を目にして、判官贔屓な野村は、タイについて多く書きたくなりました。確かに、バリやジャワのガムランは、日本にもグループがいっぱいあるし、イギリスにだって、いっぱいあるくらい盛んで、それに比べるとタイの音楽は、マイナーである。既に、先人達がインドネシアでの実践について多くを書いているし、マイナーな方に加担したくなる自分の性質上、これはタイのことは原稿全体の50%以上書きたい!と思ってしまいました。

実際、インドネシアは芸能も盛んで、アーティストの人材も豊富で、書く内容に事欠かないのですが、、、。しかも、インドネシアは2ヶ月いて、タイはたった1ヶ月でした。インドネシアでは6人の作曲家にインタビューし、タイでは1人ですが、、、、。それでも書けることがあるはずなので、できる限りタイのことを書こう、と思いました。そういう目標を設定しないと、タイがインドネシアの片隅にちょっとある報告になる危険性があるのです。そうしてはいけない。タイだけで論文を書くつもりで、進めます。そう思うと、アナンの笑顔が浮かび、ユーモア満点の面白い原稿を書きたい、と思えてきました。

刺繍の材料を買いに行き、刺繍に挑戦しました。人生初かなぁ。「刺繍音」という音楽用語があるので、いつか刺繍で作曲したいと思っておりまして。いつか曲を作って、発表する日が来るかもしれませんが、今は初心者です。