野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

合体

東京に遠征です。今年の1〜3月は、千住で「だじゃれ音楽」のプロジェクトもあったし、小金井で「あいのてさん」もやったし、ASIASのフォーラムもあったし、東京に頻繁に来ておりました。4ヶ月ぶりの東京です。浅草のアサヒアートスクエア。

隅田川アートプロジェクト(SRAP)というので、今年は鶴屋南北を特集しています。しかし、7月17日まで東南アジアで、今年は参加できないですよ、と言っていたのですが、アサヒビールの根本さんと三味線の悠美子さんのポジティブなチャレンジ精神に感化されて、まぁ、なんとかなるかなぁ、と引き受けてしまったわけです。

で、インドネシア滞在中にも、台本がメールで届いたり、ここを作曲して下さい、とか、進めていたわけですが、インドネシアでもタイでも、今しかいない野村誠を最大限活用しようという波に飲み込まれ、なかなか準備に着手できずにおりました。

帰国してからも、よりによってこんな時期に、海外からの来客ラッシュで、本日に到るわけです。結局、本日が練習の第1回目。本番前日なのです!

出発前に「あくまで試演ということで、練習もあんまりできないし」と念を押しましたが、気がつくと、出演者がいっぱい。舞踊もあって、台詞もあって、効果音もあって、「アジア音楽笑劇場試演」なんてなっている。実際に現場に行かないと、さっぱり分からない全体像、ということで、とにかく、自分のパートを歌えるように、新幹線の中でも小声で練習し続けて、いざ浅草へ!

着いたら、まずは個人練習しようと思っていたのですが、甘かった。悠美子さんはもちろん、日本舞踊の藤間先生やお弟子さん、プリンの一座の方々、シタール王子さんまで、勢揃いでした。どうして、みんな時間前に集合しているの!ということで、到着すると同時に、段取りの確認や通しが始まっちゃたわけです。休めない!

そして、江戸の歌舞伎の木琴をモデルに、ジャワの職人が作った木琴を、森重さんからお借りし、グンデルもお借りして、これを演奏しながら、万歳やったり、歌ったり、台詞を言ったり。どうなることか、と探りながらやってみる。これがなんとも面白いのです。悠美子さんが集めてきた方々が、皆さん柔軟かつ面白い方々で、それぞれが、舞踊だったり、曲だったり、個別に創作/練習して準備してきたパーツがあるようでして、それらは今日まで個別にバラバラだったのですが、一気に合体したら、おおおおっ、これはなんだ、無国籍な歌舞伎になった。もう、こんな舞台だったら、さらに、ジャワ舞踊や、合気道や、色んな人が交差して、アジア音楽笑劇場やりたいなぁ、と夢想してしまいます。

せっかくなので、インドネシアやタイでの様々なコラボレーションの名残も、所々に盛り込み、千住でのだじゃれ音楽の面影も、盛り込み、カラフルです。

それにしても、自分のお葬式を演出した南北という人物は凄いなぁ、と思いましたが、それ以上に驚いたことは、南北の戯曲をもとにしているのに、21世紀の我々がここまで遊べるということです。彼の作品の懐の深さに、本当にびっくりしました。ぼくの作った曲を、200年後の人が想像しながら上演してくれたら、嬉しいので、幽霊になって観に行くでしょう。明日は南北さんも来てくれるかもしれません。

全体の稽古が終わった後も、悠美子さんと二人で、音楽パートの練習。悠美子さんがお帰りになった後も、慣れない楽器を弾きながらの語りの練習。

明日も、猛練習をして、いよいよ本番。500円ですし、南北さんもブログの読者の皆さんも、是非、覗きに来て下さいね。