野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

モグラとヤギ

明日は、「レスピラール花の駅」にて、「モグラとヤギ」の演奏会をするので、リハーサル。「モグラとヤギ」は、野村誠(ピアノ/鍵ハモ)+やぶくみこ(パーカッション)で、ノムラ→モグラ、ヤブ→ヤギ、と聞き間違えることから、「モグラとヤギ」になりました。そして、ヒュー・ナンキヴェルの傑作「Dancing Mole(踊るモグラ)」と「Goat Music(ヤギの音楽)」をレパートリーに含めるユニットです。

http://www.hananoeki.com/

そして、アンドリューとギギーの曲目解説とプロフィールを日本語訳し、野村の曲目解説も書き終えたので、日本現代音楽協会のコンサート「鍵ハモトリオ」のプログラムの挨拶文の原稿を書きました。書きたいことがいっぱいあるのに、たった500字に絞るのが非常に大変で、書いては消し、書いては消し、結局、残った文章はこれです!

 作曲家として、作曲仲間を応援したくて、「鍵ハモトリオ」を始めました。世界初演13曲の苦労を買っても、ぼくは応援したいのです。作曲は孤独な作業です。個人的な関心を突き進めることは、ムーブメントになりにくい。それでも、作曲家は小さな石を投げ続け、自らの表現で世界に対峙する。こうした小さな挑戦を、暖かくも厳しい眼差しで批評する場を設定することこそ、必要と考えました。
同じことは、「鍵盤ハーモニカ」という歴史の浅い楽器にも言えます。鈴木楽器製作所は、教育楽器というイメージを払拭し、プロ仕様の楽器に取り組んでいます。これは、現時点では決してシェアの大きい市場ではありません。子ども向けの楽器だけを売る方が、目先の売り上げは大きいでしょう。しかし、こうした未来への投資をするメイカーを、ぼくは応援したい。そして、そのために、この楽器を本気で探求する演奏家が必要で、この楽器のための新しい音楽を創る作曲家が必要なのです。それなしに、この楽器の未来や発展はあり得ません。
 本日の演奏会は、歴史的事件として語られる日になるでしょう。この場に立ち合っていただけることを、本当に嬉しく思います。愛情のこもったご批評をよろしくお願いします。

鍵ハモトリオの15曲連載 第5回 木山光 「曾根崎心中」

ドラムンベースのようなアップテンポなビートで執拗に反復される曲。躍動的で、クラブミュージックのテイストに近い。それでいて、ハーモニーは妙に美しかったりする。しかし、演奏していると作曲者の気迫が、奏者に乗り移ってきて、殺気だってくるのです。消耗するほどの激しいビートでの機械的な演奏が続いた後、次第にビートが消えて、響きの渦に解けていく。ミニマル音楽やポストミニマル音楽の作曲家の他の作品に見られない特長は、この殺気だった気迫で、その点において、この作品は非常に日本のサムライの音楽のように思えます。作曲者が「曾根崎心中」というタイトルをつけた由縁も、そこにあるのでしょう。

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