野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

日本の未来は明るい〜佐世保にて

佐世保まで来ております。長崎大学教育学部佐世保に主張して行った「書育・音育・植育」というイベントにて、ワークショップとファイナルコンサートをしました。長崎大学の西田治先生のお招きによるものです。着任して6年目の西田先生は、保育園、小中学校との関係を育み、音楽の楽しさを伝えていく活動を続けておられます。そうした活動は派手さはありませんが、訪れる度に、学生達が成長していたり、新たな問題意識を持って、次の課題に取り組んでおられる姿は、非常に好感が持て、応援したい気持ちがあります。

長崎大学を訪れるのも昨年11月、今年5月に続いての3度目なので、できるだけ以前と違う活動を盛り込もうと思いました。前は、結構鍵盤ハーモニカを演奏したので、今回はピアノの特殊奏法を紹介したり、同行してくれたやぶくみこさんは、前回はアラブの太鼓だったので、今回はインドネシアの太鼓、というようにしました。ワークショップでは、最近よくやっている「フルーツバスケット・オーケストラ」で色々楽器をやったり。

そして、今回は、ファイナルコンサートも前回よりも充実でして、大学生のボディパーカッションと、えんぴつオーケストラがありました。えんぴつを40名で演奏すると、なかなか素晴らしい音なのです。えんぴつを嬉々として演奏する大学生を目にして、本当に嬉しくなったのですが、それについて、西田先生が司会で「こうした若者がいる限り、日本の未来は明るい、と思うんです」という言葉に、ドキっとしました。

「日本の未来は明るい」なんて台詞、最近、誰かから聞きました?「日本の未来が明るい」なんて、思ってました?ぼくは、自問しました。日本の未来の心配ばかりしていて、こんなこと思いもしなかった。選挙の結果、今日出るんだなぁとか、憂鬱な気持ちになりそうな時に、この言葉は、本当に新鮮に美しく響きました。日本の未来を照らす灯火は、眩しいほどの灯りじゃないかもしれない。でも、こうした若者達の行動は、日本の未来を少しだけ明るくしてくれるだけかもしれない。だからと言って、それを「お先真っ暗」と表現するのか、その微かな希望の光を「明るい」と表現するのか、は全然違うんだ、と思ったのです。

真っ暗闇の中の一本のロウソクのような微かな希望。そんな希望の光にちゃんと眼を向けて、「日本の未来は明るい」と言っていくことこそ、こうした灯火を細々と燃やしていく応援になるはずです。忙しくなり過ぎず、ちゃんとそうした光を見つけて応援の一言がかけられるような余裕を持って生きていきたい。この夜は、選挙速報は見ないで、「日本の未来は明るい」という言葉の意味を噛みしめていました。