野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

インドネシアの学校教育特集3〜マルスディリニ小学校にて

 一昨日のマングナン小学校で、高校生と小学生のコラボレーションがありました。その理由は、ヤユ先生が、高校とマングナン小学校の両方で、演劇を教えているからです(ちなみに、ヤユ先生は、公演のプロデュースとかもしていて、著名なダンサーのディディ・ニニトウォとフランス人ミュージシャンと日本人ダンサーのコラボレート公演を企画したこともあるとか。で、高校生が、自分達の高校にも来て欲しい、とリクエストしてきたのですが、たまたま、高校はイベントがあったので無理で、その代わりに姉妹校であるマルスディリニ小学校でプレゼンテーションとワークショップをすることになりました。土曜日に言って、月曜日に実現するスピード感は、インドネシアです。
 こちらは、カトリックの私立の学校で、制服もあり、一般的なインドネシアの小学校という感じです。各自が机に座り、前を見て授業を聞く一般的な学校。全校児童700人ほどのマンモス校です。
 今日の池田邦太郎さんのワークショップの後、なんと、校長先生が、「うちの学校でも、こうしたクリエイティヴな音楽の授業をやりたい。マングナン小学校だけじゃなくって、うちにも教えに来ない?」とダルー先生に打診があったとのことです。1回だけのワークショップでは継続しませんが、それを継続しようと校長先生が考え、継続していくことは大きいです。
 そして、ワークショップ終了後、ホテルで、ダルー先生だけのためのワークショップを開催しました。池田さんの手作り楽器のノウハウを、ダルー先生に伝授したのです。伝授したノウハウを参考に、ダルー先生は彼独自の教育方法にアレンジして、マングナン小学校や、マルスディリニ小学校で、クリエイティブな音楽教育が実践していくでしょう。
 ダルー先生によると、Pendidikan(教育) Musik(音楽)という2語をつなげた言葉で、Pendidikan Musikという言葉と、Musik Pendidikanという言葉があるそうです。前者は、既にある音楽の技術を習得し、その音楽ができるように学ぶことを指し、後者は、音楽により感性を豊かにし、人間性を育んでいくことを指すようです。つまり、前者は、テクニックの習得を目的とし、後者は、感性の豊かさを目的とする。感性を育めば、テクニックは後からついてくるというのが、ダルー先生の考え方です。しかし、テクニックばかりを教えて、何も楽しくなく形だけの技術を身につけても、音楽は何も楽しくない、とダルー先生は言います。そして、マングナンの音楽教育の中では、ガムランを教えたりはしないのですが、ペットボトルや身の回りのもので子どもたちがやる音楽の中に、伝統音楽の要素がふんだんに含まれていて、それを観察するのが本当に面白いのだ、とダルー先生は言うのです。
 6月18日に、マングナン小学校のコンサートをするのだけど、出演して、子どもとコラボレーションできないか、とダルー先生から打診がありました。なんと、6月18日の週は、日本から「あいのてさん」の尾引浩志さん、片岡祐介さんが来ている時!あいのてさん+子どもたちのコンサートが、インドネシアで実現してしまいそうです。
 マングナン小学校とダルー先生を紹介するドキュメンタリー番組を日本のテレビ局で作らないかなぁ、この柔軟な教育哲学と実践を、なんとか日本に伝えたいものだと思ったりしました。誰か、企画しませんか?手伝いますよ。