野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

インドネシアの学校教育特集2〜マングナン小学校にて

 マングナン小学校に池田邦太郎さん、斉藤明子さんと到着したのは、8時10分。小学校は、通常、朝7時から始まります。小学校は、通常、お昼までで終わります。月曜日から土曜日まで、週6日です。
 マングナン小学校は、貧しい人は授業料無料で、政府の援助はあるものの私立で、大手新聞社などからのスポンサーにより成り立っている学校らしい。日本で朝日新聞がスポンサーになっていて、貧しい人は無料で入れる私立学校なんて、あるかな?この話だけでも、ちょっとびっくりです。
 政府が通達しているカリキュラムがあるけど、その通りやることになっているけど、やっていない学校もあるらしい。やっていないのも許容されるアバウトさが、インドネシア
 この学校は、生徒が整然と座って、先生の話を聞くスタイルではなく、もっと家で過ごしているように自由に、子どももうろうろしたりしながら学習する。「学校は、まず、楽しい居心地の良い場所でなければいけません」とダルー先生。「学校は家のようになっていて、先生は兄弟や親のようで、みんなが友達であることが大切なのです」。
 子どもが先生に管理され、先生が校長、教頭に管理され、校長、教頭は教育委員会に管理され、教育委員会文科省に管理されるという日本の管理教育とは、全く別の発想です。
 「子どもが途中で飽きてしまったら、また、楽しんで集中することはあり得ません。だったら、その日は、それ以上やらずに、おしまい。教えようと計画していたことがあっても、流れによって、それに子どもが乗らないときもあります。だったら、次の日にそれをやればいいのです。」
ダルー先生は、当然のように言います。チャイムも鳴りませんし、いつが休みでいつが授業時間なのか分からない。昨日の打ち合わせでは、2年生の授業を見学して、その後、全校生徒にプレゼンして、最後に4年生とワークショップ、という計画でした。ところが、2年生のクラスに行ってみると、既に何かが始まってしまったようで、その流れを重視したいので、1年生に変更。1年生でダルー先生の授業を見学。その流れで、突然、池田さんのワークショップがスタート。
 その後、全校生徒のプレゼンだと思って休憩していたら、面白い太鼓の音がするので、見に行ったら、演劇をやっている。何かと思ったら、高校生とのコラボレーションで、高校生が演劇、小学生が音楽をするのです。これが、すごく面白かった。小学生は、ペットボトルやパーカッションなどで、絶妙なリズムで場面転換などの音楽をやるのです。「一緒に練習したのは1回だけですよ」とのこと。
 その後、池田さんによる全校生徒への授業。非常に盛り上がりました。その後、4年生とのワークショップのはずが、これも予定とは違い5年生とになりました。全て、計画とは違ってくるのがインドネシア流です。変更に柔軟に対応できる対応力、即興力は、この国では必要です。
 池田さんの授業を、ぼくは素晴らしいと思うのですが、日本の教育界では、創作アレルギーや自由な教育への拒否反応などを示す教育者がいて、池田さんの授業を認めない人もいるそうです。子どもを如何にコントロールするかを考えている人にとっては、コントロールではなく、子どもの選択に委ねることには、拒絶反応が出るということのようです。今回、マングナン小学校では、誰も拒絶反応を示さず、大喜びでした。
 この学校は、創設者のRomo Mangunwijayaという人の「学校は楽しい場所でなければならない」という教育理念に基づいてます。Romo Mangunwijayaの理念について、勉強してみたい、と思いました。