野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

NEW FOLDER

 「福岡アジア美術トリエンナーレ」で一緒になった写真家アンキ・プルバンドノが友人と共同運営するギャラリーMES56の9周年記念パーティーに行く。New Folderという展覧会。アンキは、シンガポールなど海外で作品を発表することが多い。ところが、地元、ジョグジャに無関係に、海外を飛び回っているのではなく、ジョグジャをとても大切にしていることが分かる。パーティーに、次々に押し寄せる人々のほとんどがアンキの友人で、握手をし言葉を交わしているからだ。現代美術の画廊に、100人近い人が集まってきている。また、他の場所井比べて、西洋人の比率が多いのは現代美術らしい。ジャカルタやバリの画廊の人も駆けつけて来ている。
 アンキによると、この「New Folder」というグループ展に出展している4人の写真作家は、新しいMESのメンバーで、1980年代後半生まれの20代前半のアーティスト達。彼らが、これからのMESなんだ、と言う。海外で自分の作品を売ることも大切だけど、同時にジョグジャで新しい世代を育て、観客を育て、そうした橋渡しをしている。
 若い世代の作品は、現代美術ならではのコンセプチュアルでプッと笑えるもので、とても好感を持った。と同時に、4人の方向性は似ていて、ジョグジャテイストの現代美術のフォーマットにはまっている感じもする。フォトグラフィカの特集で、野口里佳さんが提示していた「自由な写真」のような美しい毒をもった逸脱はない。何に縛られて不自由になっているかを自覚するために、ぼくらは旅をする。ジョグジャの若者の多くは、旅をする経済的なゆとりがない。外国人との接触は、擬似的な旅。滞在中、ぼくは、ジョグジャの才能に、旅のデリバリーをしていこうと、改めて思った。

http://mes56.com/?tag=exhibition