（東京の）乃木坂の国立新美術館で、野口里佳さんの写真が１００点ほど展示されている大規模な展覧会をやっていて、大変お薦めです。ぼくも今日、見て来ました。
この人の作品は、本当に美しいのですが、多分、２０代の頃に、突然、彼女は悟ってしまって、彼女の眼に、世界はこんなにも美しく愛しく見え始めたのだと、想像されます。ナイーブな題材を撮影しているのに、写真に迷いや揺らぎや悩みといったものが、驚くべきほど感じられないのです。それは、作品の強さです。
写真の現像とは、陶芸のようだ。
陶芸家が陶器を何度も焼きながら、自分の好みの色合いを生み出していくような作業を、彼女はやり続けているのでしょう。偶然を必然に結びつける強さがそこにはあります。
彼女の写真は、とてもとても静かな音楽を奏でているようだ。ぼくは、ある展示室で空調の音がうるさいなと感じたのですが、それは、彼女の写真が奏でる静かな音楽に耳を傾けている時に、空調の音が邪魔をしたからです。
展覧会は、１０月１９日までです。この機会をお見逃しなく、ぜひ見に行ってくださいね。
