野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

吉野さつきという才能

その後、吉野さつきちゃんと夕食、お茶をして、5時間以上話し込みました。本当は二人とも寝不足で疲れていて眠たい。でも、話さずにはいられなかった。飛び石のことを中心にいろいろ。

今回の「飛び石プロジェクト」は、もちろん演出家、俳優、スタッフ、・・・多くの人の力で実現したのですが、吉野さつきの才能がなければ、絶対に実現しなかったと、思います。

倉品淳子さんとぼくを引き合わせたのも、吉野さつきでした。ジョンとジェニーで飛び石をやろうと思いついたのも、吉野さつきでした。ジェニーの演出助手に柏木陽、ジョンの演出助手にわたなべなおこを選んだのも吉野さつきです。やぶくみこさんをぼくに会わせたのも吉野さつきです。それは、意外に思いつきにくい組み合わせなのだけれど、彼女には、すんなり組み合わせられるし、その結果、それぞれにどんな影響が出るかも、半ば直感的に分かってしまう。これは、彼女のセンスであり、才能で、彼女はまさに、天性のコーディネーターです。

もう一つ、彼女はこの5年間、ホームグラウンドを持たないのに、様々な場で活動のフィールドを切り開いてきました。

駒場アゴラ劇場で展開した「演劇ワークショップ研究会」は、彼女の発案から始まったもので、この研究会が生み出した演出家同士の交流、様々な演劇ワークショップの開発、そして、実際のワークショップ現場の飛躍的開拓、その効果が、最近どんどん形になって表れ始めました。

ビジネスマンを対象にした演劇ワークショップも彼女が手がけた仕事で、実際、これまで舞台を見に来ることが少なかったワークショップの参加者であるビジネスマンたちが、昨日の公演にたくさん見に来てくれた。また、その人たちが、今後、会社での障害者の雇用について価値観が変わったとか、様々なフィードバックも始まっているらしい。

児童養護施設でのワークショップ、そして、今回の「飛び石プロジェクト」、・・・などなど。そして、彼女は以前から、刑務所でのワークショップをいつか実現したいというビジョンもある。彼女は演劇ワークショップのためのフィールドを、一つずつ的確に見つけて、そこで丁寧に丁寧に仕事をする。

彼女の直感は鋭く、それは本当に天才的なのです。しかし、その直感を具現化するために、彼女は非常に辛抱強く一つひとつのプロジェクトを丁寧に時間をかけて育てていく。その着実な仕事ぶりと、天才的な感性の両面を兼ね備えている稀有な存在です。

これは、ほめすぎでもなく、誇張でもないです。ぼくは、そう思う。

彼女の蒔いた種が、少しずつ花を開き始めているから、これから、彼女の仕事の意味が、だんだん目に見える形になってくると思いますよ。

っていう話を、やっとさつきちゃんに伝えることができました。ぼくは、吉野さつきという才能のファンなので、この才能を本当に大切にしなくては、と思います。

夏前から言っていて実現していないのですが、吉野さつきにインタビューをして、ぼくのホームページで発表したいと思っています。近々、やろうと思っています。