野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

飛び石プロジェクト2日目

飛び石の2日目。

2作品とも、初日よりリラックスして、演技に伸びが出てきて、よかったです。
明日に向けて、欲を言えば、もっと観客との対話が出てくるといいと思いました。つまり、この演劇は、キャストの中でのコミュニケーションに多大な努力をはかってきました。例えば、ジェニー・チームでは、日本語手話と英語手話と話し言葉も日本語と英語、見えない人と聴こえない人で、通訳を交えながらコミュニケーションをしていきますが、イギリス人も日本語手話を覚え、聴こえる人が次々に手話を覚え、と、様々な相互作用が起こって、コミュニケーションが困難なところから、濃密なコミュニケーションへと移行していきました。

そのコミュニケーションが舞台上の役者の間で、とてもディープに行われている。そのディープなコミュニケーションが観客を巻き込めるかどうか、が次なる課題だと思います。そのコミュニケーションが、場とコミュニケートする、空間とコミュニケートする、そういった感覚になっていくと、自然と舞台と客席の対話になると思うのです。

ポストパフォーマンストークの司会をしました。始まる前にジョンに「答えにくい難しい質問をするかもしれないが、よろしく」と言ったら、「君はいつも難しい質問をする」と答えてくれた。先に断っておくと、気楽です。

質問1 「血の婚礼」で、花嫁は「花婿」と「黒川」の二人を別々の方法で愛していると言っていた。しかし、今の家族制度の中では、二人の男性を愛することができず、二人は殺しあう。
 では、この飛び石プロジェクトのコーディネーターの吉野さつきが花嫁だとして、吉野さつきは、ジョンとジェニーの二人の演出家を別々のやり方で愛するが、もし二人の演出家が共同で作品を作ったら、二人は殺し合うことになるのか。
 それともジョンの「Stepping Stones」で見せたように、各自が一つの役割を担うのではなく、違った存在にもなれて、可能になるのでしょうか?

という最初の質問が、あまりにもディープだったため、二人が頑張って答えて、二人が協力しながら、二人の対話になっていったので、後の問いは、いたってシンプルにいきました。

質問2 今回互いの作品から、どのようなインスピレーションを受けたか

質問3 今後、日本でこのプロジェクトの先にやりたいアイディア可能性はあるか、それとも、もううんざり?

質問4 最後に言い残したことがあれば

これで、45分。盛り上がった。かなり色んな話が引き出せたと思ったけど、これまた賛否両論だったようで、アンケートでもトークに対する評価は二分。今日は結構正統派な司会者をしたつもりだったけれど、野村誠は何をやっても賛否両論になります(「あいのて」も賛否両方ありました)。ま、芸術家の宿命ですね。

ジョンとジェニーのお土産を、太田さん、さつきちゃんと買い物。なかなかいいものをゲット。

その後、飲みにいってみんなと合流。あらためて、その場が面白いと再認識。飛び石プロジェクトは、あくまで二つの作品を生み出すことが目的でしたが、その副産物として、できあがった人のつながりが、あまりにも面白い。

ジョンと話してみて、ジョンは日本語が分からないのに、それぞれの人のことをよく理解しているなぁ、とあらためて感心。言葉を使わないコミュニケーションを突き詰めているだけあって、よく分かってる。すごい。


片岡ブログにいくつか飛び石の写真を発見
http://marimba.blog22.fc2.com/