野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

宇宙ですてぃにー ワニバレエ

平盛小でのワニバレエプロジェクトの6日間の最終日です。いよいよ会場の体育館でリハーサル開始。昨日、断片的には通しましたが、今朝のリハーサルが、初めて子どもたちとの通し稽古です。昨日まで遊んでいたのに、突然通し稽古だから戸惑いますが、とにかく流れが入ればいいかな。やりながら、微妙に変更したりしながら、ようやく1回通った。みんなもだんだん分かってきた感じ。一度段取りを説明できたので、もう1回通してやりました。流れもなんとなくだし、多目的室で歌っていた時のような元気もありません。ま、でも、本番はきっといい感じにやってくれるだろう、ということで、午前の練習はおしまい。

Y君とS君が作っていた段ボールの巨大工作を舞台セットとして展示したいので、相談する。すると、まだ未完成だから、あとでいいと言いながら、お昼ご飯の時間も使って、工作を続けて、本番直前に舞台付近に設置。何を作っていたのかは、不明ですが、こだわりがあることは、よくわかる。舞台セットとしてもいい感じ。

京都女子大でぼくの授業を受けていた学生(今は社会人ですが)が二人来ました。ぼくは、児童学科の講師をしていたので、他学科の授業はほとんどしていなかったのですが、二人とも児童学科以外の出身で、今は卒業して社会人。二人とも、1回生の時に知っていた子で、たったの4年ぶりですが、大人っぽくなっていて、びっくりしました。そして、来てくれて、本当に嬉しかったです。(一人はケーキバイキングに一緒に行った授業の学生で、もう一人はだるまさんが転んだで優勝して100点をとった学生)

家庭科室でお昼ご飯の焼きそば。お母さん方がボランティアでやってくれていました。子どもも我々出演者もいただきました。ありがとうございます。

昨日までインフルエンザで休んでいたM君が戻って来た。彼は放課後ワークショップで、一見乱暴そうにつっかかってきて、でも、実はすごく優しくコンサルテティーナ(アコーディオン)で即興演奏をしたのです。それを、おじいさんが恋をしたというシーンの音楽として、やってもらおうと思っていたのですが、本番直前になって、「おれ、アコーディオンやらないから」と言い始めました。恥ずかしいのか、照れくさいのか分かりませんが、こちらは何度も薦めてみると、「じゃあ、アコーディオン持って来て」と言うので、楽器を彼に手渡したのは、開演5分前。すると、開演して、ウエインさんの歌をやっている時とかに、客席のはずれの辺で、アコーディオンを練習しているのです。開演後には、普通は静かにしなければいけませんが、楽屋もないし、練習したいというのは、本番に向けてやる気なんだし、その音がもれ聴こえるのも、また面白いものです。

あいのての3人でカラダディスコを演奏している時です。体育館の2階の通路に、なぜかY君とS君がいて、トランペットとアゴゴベルで音を出している。これも、コンサート会場では、普通はやってはいけないことですが、この1週間は、それが推奨されていました。ワークショップの初日に、前で演奏したりゲームをしたりしている時に、遥か後方の机の下に潜んでいたY君の存在が面白くて、Y君とセッションをしたのと同じことが、ここで起こりました。客席の遥か後ろの行っては行けない2階の通路のところで、出しては行けないラッパの音がします。これが、コンサートを妨げる雑音ではなく、コンサートに必要な音として、しばらくしたら、あいのてさんとY君+S君との掛け合いが始まっていました。

そして、「宇宙ですてぃにー ワニバレエ」の上演です。さっき初めて通したばっかりでしたが、みんなばっちしでした。だって、この1週間、ずっと即興で遊んできたから、みんなその場の雰囲気に合わせて演奏するのも得意だし、色んな歌をみんなで一斉に練習したりできていないけれど、でも、段ボールを作ったり、机の下に隠れたりしながらも、実はみんな歌を口ずさんでいたし、そもそも自分達が作った歌だし・・・。体育館は声が拡散していくから、多目的室で歌っていた時ほど、自分の声が自分に聴こえてこない。だから、多目的室にいるときほど、自信満々には歌えない。でも、客席用にマットを敷いて、暗幕を閉めて、たくさんのお客さんが入ると、音環境が良くなるだろう、と思っていたのですが、実際、良くなりました。だから、本番の方が、みんな伸び伸び歌えました。誤算だったのは、マイクの音量で、昨夜サウンドチェックをして音量も確認しておいたのですが、機材のトラブルなどもあり、昨日チェックした音量が全部帳消しになって、開場後、本番直前にささっと調整しましたが、バランスが少し悪くなりました。

本番でぼくが心がけたのは、できるだけたくさんの子どもにちょっかいを出すこと。ほとんど全員とスキンシップをとった感じ。そうなのです。今回、ぼくは、子どもたちとやたらとスキンシップをとっています。抱きしめたり、持ち上げたり、どつきあったり・・・・。でも、なんだかそんな気分なのね。

ウエイン、尾引さん、片岡さん、昨日から合流した3人は、子どもたちとの関係が密ではない分、音に専念してそれぞれの持ち味を出してくれました。素晴らしい。その分、潤さん、加奈ちゃん、野村は、子どもたちの持ち味を引き出すためにっていうワークショップファシリテーターの部分と、ミュージシャンの面が混ざっている感じ。

昨日、かなり無理矢理練習したところ、何で無理矢理練習したかと言えば、子どもたちのアイディアをボツにしないためです。子どもたちのアイディアをボツにするのは簡単ですが、ぼくはやつらから出てきたものは、絶対面白いと信じ続けました。だって、「ワニバレエ」を作った巨匠たちです。信じました。やつらのやることは、全て、「ワニバレエ」レベルのわけの分からない面白さの質を持っていると信じました。だから、全部採用したかったのです。昨日やってみた時には、ぼくのその判断に確信は持ってはいませんでしたが、今日の本番でやってみて、全て成立していたので、うれしかった。それを成立させたのは、ぼくや潤さんや加奈ちゃんらアーティストの工夫による面もいっぱいあると自負していますし、4年生の頑張りと張り切りと本気のおかげであるとも思っています。

コンサートが終わった後、風船を演奏したいと寄って来た子もいて、風船セッションをしたり、楽器を鳴らしたり、再び、いつもの放課後の時間がやってきました。鬼ごっこに誘われて、一緒に鬼ごっこしたり。体育館の2階の通路から降りるところ、子どもたちから、ここ危ないから気をつけており、とやさしい言葉をかけてもらったり・・・。女の子たち、最後まで残っていたし。

3年前に5年生だった中2のSさん、Aさんとも再会。今は中学校の吹奏楽部でフルートとクラリネットやっているらしい。

書きたいこといっぱいありますが、とにかく関わった全ての皆さん、おつかれさまでした。ありがとう。2年後、卒業式のころに、4年生が6年生になった時に、もう一度、さらに大きくなったやつらと何かをしてみたい、と思いました。愛すべき子どもたちです。

あと、一週間に渡り、ワークショップを手伝ってくれた京都女子大児童学科深見ゼミのUちゃんにも感謝。

それにしても楽しい仕事でした。潤さん、加奈ちゃんと3人で1週間メインでやりましたが、この3人の仕事と言えば、Bumbでの作曲ワークショップ(2004夏、2005夏)、「音・リズム・からだ」(2005、民衆社)の執筆以来ですが、大変素晴らしいので、今年の6月の館林美術館でのワークショップも、この3人でやることにしました。

音・リズム・からだ 園児とつくった音楽あそび40 おすすめ年齢表付き

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