野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

つくしの会児童合唱団の「タヌキとキツネ」

つくしの会児童合唱団の練習場に行きました。2月17,18日の「十年音泉」で世界初演される「タヌキとキツネ」の児童合唱バージョン(鶴見幸代編曲)を聴きに行くのが、メインの目的です。

えずこホール10周年記念事業としての住民参加型総合音楽劇の準備のために、ちょうど1年前につくしの会を訪ねました。そして、その時に、子どもたちの前で、ぼくが小学5年生の時に作曲した「タヌキとキツネ」というピアノ曲を弾きました。そして、いろいろ音で遊ぶワークショップをしました。ワークショップ終了後に、子どもたちの何人かから、あの曲を歌ってみたい、との言葉をもらいました。ぼくは、歌詞を考えてくれれば、合唱曲に編曲できるよ、と言いました。次に行った時には、二人の子どもがお話を作ってきました。お話だと歌詞になりにくいので、そのお話を聞いて連想した言葉をメンバー全員に書いてもらいました。その言葉を、作曲家の鶴見幸代さんに渡し、作詞を含む編曲をお願いしました。鶴見さんから、歌詞としてもう少し擬音語が欲しいとのリクエストがあり、9月に再度、合唱団を訪ね、メンバーからたくさんの擬音語をいただき、10月の終わりに、ついに鶴見幸代による本当に力作の合唱アレンジ譜が完成しました。そして、11月に合唱団に譜面が渡り、合唱団の練習の後、本日、初めて、子どもたちの演奏を聴くわけです。

27年前に11歳で作曲したピアノ曲が、27年後の子どもたちに歌われました。鶴見さんの譜面は、かなりリズムや言葉も難しく、どんな仕上がりか心配でしたが、最初の一音目を聴いた瞬間に、参ってしまいました。本当に言葉がありません。嬉しいとか、泣けてくるとか、そういうレベルを超えて、でも、生きてて本当に良かったし、鶴見さんにも本当にありがとうだし、子どもたちも細渕先生も本当にありがとうだし、全ての人々にありがとうです。こんなプレゼントをもらっている自分は、なんて幸せなんでしょう。

演奏が終わった直後に、細渕先生から「ご指導をお願いします」と言われても、言葉がありません。ここは少しテンポを速くとか、ここのアーティキュレーションはとか、そんなこと言えません。そんなこと全然、言えませんでした。しばらくは、呆然としていたと思います。

頭を冷やしてから、「すみません、もう一度歌ってください。」と言って、もう一度、聴かせてもらいました。あと、鶴見幸代作曲の「タケヤブレクイエム」も聴かせてもらいました。

つくしの会は、曲に誠実に向かい合ってくれるので、本当に嬉しいです。その調子で、思いっきり音楽を楽しんでください。