野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

朗読の吹奏楽アレンジ

ワークショップの2日目。行くと、既にメンバーがウォーミングアップをしている。3ヶ月前は、みんながもっと受身だったのに、自主的になってきたなぁ。うれしい。

みんなが寝転んで「プルプル船」というのをやっていた。昨夜、明神さんが書いた台本が、みんなが寝転んでいるものだったので、だったら、最初にそれをやることにした。

さて、明神さんの台本をそのままやる。すると、呼吸が大変で、みんなかなりしんどいことをすることになる。見ている人は、その状況を鑑賞することができるが、やっている人は、全体も把握できず、大変だったはず。でも、みんな文句も言わずに、頑張っている。この3ヶ月で、みんなかなり表現力もついたが、それだけではなく、忍耐力、柔軟性もついてきたと思う。このエクササイズは、3ヶ月前では成立していなかったはず。

で、しんどいから早めに止めようか、と思ったけど、ぼくは、もう少し待った。体力的にハードかもしれないけど、体力的にしんどい時に、思考が停止して、突発的に何かが生まれることは、いっぱいある。3ヶ月前は、そこまで踏み込めなかった。信頼関係ができていなかったし、そこで信頼関係が崩れてしまう危険性は避けなければいけなかったから。先月の「たけやぶやけた」を経て、もう一歩、踏み込めるグループになってきた気がする。

もちろん、しんどいことばっかりやるつもりはありません。

でも、しんどいこともやれるだけの土台ができてきたのが、うれしいなぁ。

明神さんの台本は、昨日の「たけやぶやけた」の一場面が発展しているシーン。そこに、「体で名前を描く」(柏木ワークショップ7月)+「楽器」(片岡ワークショップ7月)を合体させてみた。このシーンは11月3〜5日にかけて、明神さんとメンバーで、さらに練り上げられるはずです。

8月の倉品さんのワークショップの時、自主ワークショップの「ハムレット」の群読が面白く発展したらしい。それを、6月のワークショップで椅子とりゲームで作った「テキストのたね」で試したら、面白かった。26人での朗読が、短いブロックごとに、誰かが読んだり、読まなかったりする。まるで、26トラックの曲のON・OFFをしているよう。そこで、閃いてしまった。この群読をそのまま吹奏楽にアレンジできる!!!つまり、26人の朗読を26のパートに置き換え、朗読のリズムをそのまま音符にすれば、曲になる。1曲できた!

続いて、「た」「け」「や」「ぶ」の4文字だけを使った歌づくり。

グループ1は、かなりロックな感じ。ギターでコードもついていた。熱唱したい。

やけた・やけた・やけた・やけた・ブーブー(Am・G・F)

ややぶた・やぶけた・ぶっけた・やぶや・ぶたやけ・ぶたやけ・やけたぶた・たっけー・やっけ・やけやけ・やった・やぶけた・やっけ・ぶたやや・やった

グループ2は、「たけやぶ」という4文字で複数の声部に分かれて、ミニマル風の美しい曲。「たー・たー・たー・たー」と「たけや・たけや」が重なったり、「けー・けー・けー・けー」と「けたや・けたや」が重なったり、「やー・やー・やー・やー」と「やぶけた・やぶけた」が重なったり、「ぶーーー・ぶーーーー」と「ぶっけた・ぶっけた」が重なったりして、最後に「たー・けー・やー・ぶー」ときめがある。

グループ3は、「ぶった・ややぶた・たぶーーーや」が3拍子で、その後、ケタケタのリズムにのせた「ぶった・やぶけた・たぶーや・ぶたや」が、16ビートに乗って反復された。

グループ4は、「ややぶた・やけた・ぶたやけ・けたけた」とスクエアにリズムで始まり、「たっぶたぶ・やっやぶた・ぶっぶぶぶ・ぶー・やったやった・けったやけ・けっけけけ・けー」という付点のリズムになり、最後は、「やぶけた・ぶーけ・やけたぶた・たぶーや・ぶった・やーやーやー」と16分の細かいリズムや様々なアーティキュレーションが出てきたりして、複雑化していく。

グループ5は、振りもつけて、民謡風。「やった・けった」「やーやーやーやー」「けーけーけーけー」「やぶや・ぶやぶや・けぶけぶ・ぶたや」「たぶたぶ・たやたや・ぶったぶた」

数分で終わると思った発表に30分近くを要して、驚いた。メンバーの表現力やクリエイティビティが、どんどんアップしていて、この3ヶ月間は確実に実になっているんだな、と嬉しく思った。

最後に、池田邦太郎さんが来たとき、どんな曲を最後に演奏したのかを、やってもらった。事前に準備もなくいきなりやったのに、すごく良かった。今回、2日間ワークショップをやって、全てがこの3ヶ月間から出てきた素材をやったのだけど、やればやるほど、この3ヶ月間の濃密さを痛感した。みんないい時間を過ごしたんだなぁ。講師で来てくれた方々にも感謝です。

ということで、えずこから東京に帰って来ました。これらの素材をもとに、ぼくは原作になる小説でも書けないか、とちょっと考え始めました。

この2日間の様子は、以下でも読めます。
http://www.ezuko.com/10th/index.html