野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

アフリカは凄い〜あいのて収録

今日は、「あいのて」の#5、#6、#7の収録でした。#7は、#1〜#6の再構成なので、エイちゃんとルリアちゃんによるシーンが二つあるだけで、今日のメインは、#5、#6です。

今日は最初に、カメラさんの顔と仕事ぶりをきちんと見ようと思いました。エイちゃんとルリアちゃんのシーンを撮っている時は、カメラさんの側で、できるだけカメラさんの気持ちになってみようとしました。これが、良かったのかどうか、分かりませんが、今日のカメラさんは、すごく積極的で、コミュニケートもしやすく、とてもいい雰囲気だったように思います。

#5のディレクターは、今回初登場の三浦正宏さんです。三浦さんの担当する#5は、今までの台本と違って、ぼくたち(あいのてさん)が演技するようなシーンが多いです。これは、新鮮かつ難しい取り組みでした。音楽のプロでありながら演技の素人である我々が、中途半端に演技をすると、どうしようもなくなりかねないからです。でも、三浦さんは、「お互い遠慮があると思うけど、できるだけ遠慮なしにやりたい」と言っていました。つまり、三浦さんは、三浦さんの知るテレビ的手法で、遠慮なく、ボールを投げてきたわけです。では、音楽家である野村は、どうやって遠慮なく、このボールを返すことができるか、というのが、今日の収録だったわけです。

ぼくからの返球は、演技するところを、全て演奏で表現したということです。もちろん、演奏には、顔の表情や体の動きも付随します。でも、音楽家として演じるということは、演奏することに他ならない。そして、それが成立するように、作曲するわけです。だから、台本の中に、エイちゃん、ルリアちゃんは台詞が書いてあり、ぼくのところには、ト書きがあります。しかし、ぼくは、その全てに、自分の演奏する楽譜を書き入れました。これは、楽譜の書き込んである台本とも言えますが、台詞の書き込んである楽譜とも見えます。エイちゃんやルリアちゃんの台詞も含めた音楽として、全体を捉えて、この音楽にどう取り組んでいくのか、がぼくのスタンスです。昨日は家でじっくり練習してきました。芝居なのに、舞台上で芝居として音楽をしている存在であることに、すごくやりがいを感じました。なんだか、新しい挑戦です。今日は、初めの一歩ですが、大きな一歩が踏み出せたような気がします。

それから、ルリアちゃんがますますノビノビしてきました。ルリアちゃん、本当にいい音を出していて、尾引さんと二人が際立って表情豊かな音を出しています。この二人は、どんどん音の世界を追求していきます。頼もしいです。

一方、音とは全然違うところに、妙に本気になったりするのが、エイちゃんと片岡さんです。片岡さんは、時に音に無頓着な異様なパフォーマンスに走って、粗雑な音を出したりします。ところが、実はエイちゃんも、時に雑で大胆な音を発するのです。雑は決して悪いことではありません。しかし、もしエイちゃん以外の4人が、みんなこだわりの音を出していたら、エイちゃんだけが、中途半端に浮いてしまう可能性があります。このことを無意識に察知しているのか、片岡さんの存在とエイちゃんの存在が、妙に共振しているように、ぼくは感じました。

ルリアちゃん、尾引さんは、引き締まった音を
エイちゃん、片岡さんは、破れた音を

出して、バランスが取れているんだ、きっと。そして、この5人のアンサンブルをオーガナイズすることこそ、ぼくの仕事だと思います。ただ、このことに自覚的になれたのは、今、日記を書きながらなので、これは、#8以降の野村の課題です。

それにしても、このメンバーでの収録、本当に楽しいです。

途中、休憩中、恐い話から脱線して、尾引さんが「おばけだぞー」と寝言を言っていた話が出た時、片岡さんが言った。
「野村さんの寝言で、こんなのがありましたよ。アフリカは凄い!どんどん作曲ができていく」
これが、この日のヒット!本番前なんかに気を引き締めたりリラックスするために、誰かが「アフリカは凄い!どんどん作曲ができていく」と言ってくれたりして、みんなの笑顔。

#6の「石テクノ」を収録したのは、21時ごろ。13時から収録開始で、もう相当へたばったころに、機械のような規則的な反復を人力でやるのは、体力的に相当しんどかったです。しかも、ぼくは、右手で鍵ハモ吹きながら、左手でペットボトルでバスドラ風のビートを叩き続けるというハードワークで、ヘトヘトでした。でも、自分たちで作った曲なんで、自業自得ですが。

結局、収録が終わったのは、22時過ぎ。ヘトヘトになりました。#5、#6とも、内容を欲張らずに、しっかりフォーカスしたのですが、それでも各シーンの色、味付けが、十分濃く出せたなぁ、と思います。

ということで、疲れたけど、充実した1日でした。そして、今日で石の回は収録済みですが、ぼくは自分の石と、自分のペットボトルを、持ち帰りました。これは、大事な楽器です。