野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

白石女子高校吹奏楽部

白石女子高校でのワークショップ。ここは部員が多く、50人くらいいた。教室は人数が込み合っていて、指揮台ぎりぎりのところまで、木管の人たちが迫ってきていて、ぼくは身動きができないところに取り囲まれたくらい、動けるスペースなし。顧問の古澤先生は社会の先生らしい。

まず、最初に「音づくりのためのコラール」を聞かせてもらった。続いて、ぼくが演奏する番だが、この部屋(吹奏楽部専門の練習室かな?)にはピアノもないので、鍵ハモで即興演奏を聴いてもらった。それから、えずこホール10周年事業に向けて、どんなことをしようとしているかを説明。

そうそう、せっかくコラールを聞かせてもらったので、昨日の夜のワークショップでやったリズムだけ決めたコラールをやってみた。で、ピッチは「ソ」と「ラ」だけを使う。もちろん、吹奏楽には移調楽器が多いから、色んな「ソ」とか色んな「ラ」があって、それで自然にハーモニーができる。続いて、「ソラシレ」によるコラール。これは、昨日の「生命の時間の流れ」のコラールだ。なかなか美しい。

続いて、ギター部でやった一人一音演奏もやってみた。50人いると、全く違った感じになる。

それから、昨日もやった「でしでしでし」の抜粋。50人で作るサウンドはなかなか気持ちいい。「でしでしでし」では、どんな感じでロックバンドと吹奏楽団が共演したのか、どんな感じで2台ピアノが入ったかを、全部口三味線的に説明したら、だいぶ笑ってもらえた。好感を持ってもらえたようで、やろうとしていることが分かってもらえたよう。

ぼくはロックミュージシャンの使う言語、クラシックの人の使う言語などを通訳するような仕事もしている、と説明し、ぼくがお箏の言葉も、ロックの言葉も、ピアノの言葉も分かるから、それが共存できる音楽を作れるし、今回の場合は、さらに、演劇やダンスと一緒にやったりするんだ、と説明した。

それで、ぼくが芝居を実演して、それに合わせて、さっきの一人一音をやってもらった。テキストとして、表彰状を読んだ。しかし、この一人一音が、音数が多すぎるので、減らして、コントラバステューババスクラシロフォン、ミュートしたトランペット、だけでやってもらい、その後の和音をホルンとクラリネットだけでやってもらった。さらに、一音として、できるだけ出しにくい臨時記号のついた音(ドとかではなく、ファ#とか)をppで演奏するようにしてやることにした。今度は、吹奏楽団が老人ホームで演奏した新聞記事をテキストに、ぼくがおばあさんの台詞の即興芝居をしてから、演奏してもらった。さっきよりも怪しいサスペンス風になった。そこで、今度はサスペンス風ドラマを演じてみようと試みるけど、なかなかうまくいかない。生徒たちの演奏は、すごく良かった。

最後に先生から質問。打楽器をいろいろ使って、何かできないか。

まず、スライドホイッスルを持ってきてくれたので、スライドホイッスルとトロンボーンの共演というのをやってもらった。

その後、1995年にイギリスで初演した「Physical Education」をやってみた。これは、木琴を卓球台と見立てて、左右に卓球ラケットを持ったパフォーマーが卓球をする演技をする。その時、木琴奏者は、マレットでボールの軌道を描きながら、木琴をボールが弾むように叩く。それぞれの卓球プレイヤーがボールを打ち返す仕草をしたときに、それぞれについた演奏家が短い音を出して、ボールがラケットに当たった音を表現する、というシンプルなもの。今回は、プレイヤー1には、コントラバスバルトークピチカート、プレイヤー2にはミュートしたトランペットで、音をつけてもらった。なかなかの好演だった。

終わった後の終わりの挨拶が、今日の初めの挨拶よりも圧倒的に大きい声だったので、本当にまた来てね、というメッセージに感じた。また来よう。

なんでも、ぼくが立ち去った後、みんな卓球を続けていたらしい。気に入ってもらえて嬉しいな。終わった後、顧問の古澤先生と話をしたところ、なんでも、つい最近の定期演奏会の中でも、生徒たちの要望でモップとか色んなもので演奏するステージがあったり、時代劇のテーマ曲のメドレーに合わせて、先生がサムライの格好させられたりしていたらしい。既に音楽劇の素養がある人たちだったんだ。生徒たちはいっぱいアイディアを持っているみたい。こっちが教わった方がいいくらいだ。いっぱいアイディアをもらって、面白いステージを作ろう。そして、参考にその定期演奏会のビデオ借りてきちゃいました。