野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

子どもと伯母

徳島県立近代美術館へ。今日はワークショップ。現在やっている展覧会、特別展「音楽『色、線、形、そして音』」の一環。まず、展覧会を見る。受付を入るとすぐに、野村幸弘さん編集による映像「モダンアートの音楽」(7月のワークショップの様子)が上映中。会場に入ると、サティの音楽やドビュッシーの「牧神の午後」などが流れている。シャガールの「ダフニスとクロエ」、マティスの「ジャズ」、ケージの版画などが展示してある。7月のワークショップで作った音源が、それぞれの絵の前にヘッドフォンをして聞けるようになっている。「クラリネットをもったアルルカン」という彫刻を見ながら、ワークショップで作った曲を聴いたら、すごくよかった。シャガールの絵の曲もすごいいい。絵を見ながら曲を聴くって、なんとも言えない体験だ。
さて、ワークショップ「例えばクレーの絵を音にすると その2」。13:30〜16:00.前回(7月)のワークショップの時は、ワークショップのタイトルに「例えばクレーの絵・・・」とあるのに、クレーを取り上げなかったので、今日は、是非ともクレーを取り上げたい。まず、クレーの「子どもと伯母」という絵に取り組むことにした。
まず線に着目。線に合わせて音を出す。基本的に直線の組み合わせからできている絵だが、左上にS字っぽい曲線がある。これをオスティナートにして曲全体を支える要素にした。中央の水平線に着目した人がいた。ここから四方に広がっていくことにした。また、曲線から曲線にジャンプする度に音色が変わることにした。
色に着目した人がいた。柿色の部分だけに着目してメロディーをつくる、レモン色の部分に着目してメロディーをつくる、グリーンの部分を解釈して静かなメロディーにする、ピンクの部分を朗らかなイメージの人、おどろおどろしいイメージの人がいて、その両方の要素を持たせた。
ブツブツに着目した人がいて、それをカバサのブツブツを連想し、マラカスなどをシャカシャカやって、その感じを表した。
そうやって、できた「線の音楽」と「色のメロディー」と「ブツブツのシャカシャカ」を重ね合わせた多層的な音楽が生まれた。これだけ多層的だと演奏している人が客観的に聞くのが難しいので、録音してみんなで聞いてみた。
気がついたら2時間半が過ぎていた。2時間半、ずっとクレーの絵を見続けていた。その間に線に着目したり、色に着目したり、ブツブツに着目したりして、絵が全然違う姿を見せてくれて、本当に不思議な面白い体験だった。こんなにじっくり絵を見ることはない。
明日は、何の絵に取り組むのだろう?