野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ガムランでホエールトーン

ブラックバーン・アートギャラリーでのワークショップ。このアートギャラリーがガムランを持っていて、しかも今年に日本を特集をしたプロジェクトをしていたところで、日本人でしかもガムランの作曲をしているぼくの経歴を見つけたレベッカが、ちょうどいいとワークショップを企画した。
ヒューと、ヒューの息子のフランクと一緒に行く。ガムランで創作ということで、またしても「ホエールトーン・オペラ」から抜粋で、色んな曲を取り出してやってみることにした。こうやって、ワークショップで試しながら、全幕上演のためのスコアを完成させていくのが目的。ワークショップの参加者は、大人も子どももいる。
そこで、まずは第1幕の最初「寒い」の部分をやってみた。「寒い」をイメージした即興。その後、今のイメージを譜面にしてみよう、と図形楽譜をみんなで作ってからもう一度演奏。これで、全幕上演の時、この場面は、この楽譜で演奏することになる。この曲の下敷きができた。
続いて、第1幕の後半の「どすこい、どすこい」をやった。「どすこい」が言いにくいから「どぅふっ」というのが生れたりした。
それから、「次はどこ」にあたる「しょうぎ作曲」をした。「しょうぎ作曲」をするのは久しぶり。フランクの考えた強い音と弱い音をフェルマータしながら交互に演奏するのが、すごく味わい深かった。
第2幕から、Fish & Chips。この曲、実はヒューはあまり気に入っていないみたいで(幼稚っぽいからかな)、それならと、ガムランのスレンドロ版で、即興の要素を加えてバージョンアップした。Slendroがslender(=細くなる)みたいで、フィッシュ&チップスで痩せるみたいでおかしいね、とヒュー。
第2幕の終わりの「ブラックプールに行く」曲の途中の美しいインストの場面を、ガムランでやってみた。リーダーの演奏する音型と同じ形で、少しずれてみんなが演奏するルール。これは、色んな場面で応用できそうで手軽。
その後、第3幕の殿様の治療の音楽を、2グループに分かれて作ることにした。まず、5分で図形楽譜を作り、お互いに交換して、それを曲にすることにした。ぼくのグループは針治療ということで、紙にデタラメに点を打った。オレンジのペン、紫のペン、赤のペンと3色使った。それぞれの色の点を折れ線で結んだ。これで楽譜だね。赤がリズム、オレンジが音程、紫は秘密の要素、と注釈を書いた。
ヒューのチームから来た楽譜には、飲み物の絵、扇子の絵、食べる絵、いびきの絵が描かれて、それが矢印で結ばれていた。そこで、それぞれの絵に対応する楽器と演奏法を考えた。
こうして2つの治療法を発表し合って、おしまい。ちなみに、10:30〜12:30、13:30〜15:30という時間でワークショップをしました。
今日はワールドカップの予選で、今日負けるとイングランドは、1936年以来、初めて予選敗退だかなんだかで、大切な試合らしい。ヒューの家で最後の夜に、楽しく過ごしたいので、是非勝って欲しい。ベッカムが退場になったりしたけど、1ー0でオーストリアに辛勝。
ヒューの家族とフィッシュ&チップスで、今回の滞在で最後の夕食を楽しんだ。
ヒューは寝る前に、最近レコーディングした曲とかを聞かせてくれたり、作った歌を弾いて歌って聞かせてくれたりした。いい時間。togetherという歌、一緒にいて、一緒に手をつないで寝て、また次の日には離ればなれだけど・・・、というような歌が、すごく美しかった。その歌は、京都で「東錦」という食堂に行った時のエピソードが元になっているらしい。
スーツケースに荷造り。もうすぐ日本だ。