野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

七草粥を食べず、出版社で打ち合わせ


まず、晶文社へ。地図にあるはずの場所に、出版社らしいものが見当たらないなぁ、よく見ると、この建物に小さな看板で「晶文社」ってある。でも、入り口がどれだ?このガラガラ扉を、と入ると、すっごい質素な晶文社に到着。

5月か6月ごろに出る予定の「老人ホームにアーティストがやって来た(仮題)」という本の打ち合わせ。(高齢者関係のことを中心にしている)ライター大沢久子さんが、さくら苑での共同作曲について本にまとめてくれるはずが、
「野村さんも半分書いたほうが面白くなると思うから」
と、いつの間にか共著になって、お互いに原稿用紙110枚程度の原稿を書いた。これを叩き台に本を作るのだけど、二人の視点がまったく違って、面白い。大沢さんは介護の見地から書くし、ぼくは作曲の見地から書く。同じ出来事が、違う側面から記述される。
「だから、大沢さん、野村さん、大沢さん、野村さん、って、それぞれの原稿が交互に出てくるようにするといいなじゃないかな。」
と編集の安藤さん。

ある障害者施設の
「安心してサボれる」
というキーワードが面白かった。なるほど、
「安心してサボれる音楽」
やりたくなければ、自然にやらないでそこにいられる。さくら苑での「わいわい音頭」は、そんな感じだなぁ。それに絡めて、「一緒にいれば、それでいい」っていう話をした。そんな話が本の締めくくりに来てもいいかもね、という話になる。

本の導入に、寝たきりとか、痴呆とか、について、大沢さんに書いてもらうことになった。
「高齢者って言うと、暗いイメージ、画一的なイメージしかないけど、そうでない部分を伝えていきたいよね。」
「明るいのがいいよ、って、沼田さん(故人)も言ってたからね。年寄りが明るく楽しく生きていることを歌に盛り込みたいんだ、って樋上さん(自称さくら苑のキムタク)も言ってたし。」
いい本ができそうな予感。

大沢さんが、
「びっくりしたでしょ?建物とかには全くお金をかけずに、とにかく本にだけお金をかけよう、という姿勢が表れているよね。」
まったく、同感。

それから、音楽之友社へ。こちらは、自動ドアで、受付のところには、パソコンがあって、画面にタッチしていくと、必要な事業部に電話がつながる。ソファーもあるし、エレベーターもあるし、晶文社の後に来ると、全てが超ハイテクに見える。もちろん、小学館の後に来れば、質素な手作り風に見えるはずなんだけど。

「教育音楽」の岡部さんと新連載の件の打ち合わせ。何でも、昨年7月の合唱セミナーで、ぼくが相当好評だったらしい。アンケート結果を見せてもらった。嬉しいし、学校の先生も随分意識が変わってきたんだなぁ、と思う。
「先生方にとって、野村さんは、いい意味でカルチャーショックだったようです。」
アンケート結果は、確かに大絶賛で、しかも授業に生かしたい、今後は、もっと柔らかい発想で授業をしていきたい、などの声もあるし、鍵ハモ最高の声もあるし、ぼくのキャラまで、雰囲気がいい、個性的、感性鋭い、天才、と褒めてくれてたみたい。

ぼくのキャラは、先生には理解しにくく、「だらしない」とか、「計画性がない」とか、そういう言葉で片付けられる心配があったのに、意外や意外。先生たち、理解してくれた。それで、やっぱり学校の先生は、4月からは、小学校の先生はすぐに使えるネタを欲しがっているし、こびる必要はないけど、授業で使えそうなネタを連載してみませんか、と提案されたので、いいですよ〜、と即答。小学校の音楽の授業でできそうな面白いネタなんて、いくらでも思いつくも〜ん。

で、家に帰ってからは、「音あそび」の本の原稿の直し。

作曲家の坂野嘉彦さんからメールが来て、鍵盤ハーモニカの現代音楽ユニットやるなら、譜面を書いてくれるみたい。そう。2005年は、鍵盤ハーモニカ元年!毎日、1小節ずつ、必ず鍵ハモの曲書いているもの。今日で7小節目。でも、ぼくの東京のアパートは、となりに音が丸聞こえだから、夜は音出せないなぁ、と、今日の1小節は、吹かずに書いた。昨日までは、吹きながら考えていたのだけど。