野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

林業研究部/鬼の相撲と河童の相撲/日田どん楽団

オリジナル日田ミュージック

《どんどん日田どん!》

林業祇園囃子・相撲の神様大蔵永季をテーマにしたコンサート

 

パトリア日田(=日田市民文化会館)の15周年のコンサートとして、ぼくが監修する公演として準備中。今日も日田へ行く。担当の中村美波さん、館長の及川康江さんと、大分県農林水産研究指導センター林業研究部を訪ねる。主幹研究員の芦原義伸さん、現場アドバイザーの城井秀幸さんから、木について教えていただく。お二人が本当に木を愛していること、そして木を使ってどんな遊びができて、それを子どもたちに伝える方法を編み出していることを体感する時間となった。日田の林業は杉がメインで、杉は柔らかく気候とともに変化する。だから、木琴などを作れば、変形して音階が変化してしまうから、古典的な意味での楽器には向かない。でも、逆に変化を楽しむという意味では、現代的な変化に富む楽器を作れると思った。木の強度を調べるのに、音で測定するという話も面白かった。材質の違う様々な木を叩かせていただいた。「どんどん」色々な木が出てきて、アイディアも膨らむ。

 

中村さんが河童と相撲に関する資料をたくさん集めてくれていた。小馬徹さん(神奈川大学教授)の2008年の講演録『鬼の相撲と河童の相撲 ー大蔵永季の相撲と力を歴史人類学で読み解くー』が非常に面白く勉強になる。

 

夜はワークショップ。今日は、ドレミの出る楽器を持参してもらった。フルート、鍵盤ハーモニカ、リコーダー、ギター、オカリナ、ウクレレ、木琴、アコーディオンなどの楽器が揃う。これだけ楽器があると、楽団の感じが出る。前回に引き続き、パッヘルベルのカノン風の《カエルのうた》を演奏する。音色の種類も増えて、いい感じ。続いて、大相撲の一番太鼓のリズムの練習。これは、木の打楽器アンサンブル。《たたみ石》という歌では、歌の応答、石の合奏、楽器のソロまわし、でアレンジ。

 

休憩中にリコーダーでベートーヴェンの《歓喜の歌》を吹いてくれていたので、これもみんなでやってみる。相撲とベートーヴェンの出会いも面白い。前回やった下駄まわしパフォーマンスも少しだけ発展。1月29日の公演のイメージが、少しずつ形になっていく。チラシ用に、全体写真の撮影もした。この「日田どん楽団」の名前を考えようと思っていたけど、みんなに相談し忘れた。

 

今日のために10年ぶりにフルートをやることにして、それがフルートを習い始めるきっかけになった、という報告もあった。このワークショップから、そうした展開があるのは嬉しい。

 

チラシのデザインができあがってきていて、ワクワクしてきた。

河童と相撲/パープルリボン作曲賞本選会

ピアノの調律が入り、我が家のピアノの音色が全く変わってしまい、当惑の一日。これまで、30年かけて上野泰永さんと培ってきた関係があり、感覚的な部分を阿吽の呼吸で伝えてきたので、また、これから内川明さんとやりとりしながら、ピアノの音色を協働作業で作っていく必要があるなぁ、と思う。まずは、調律によって、何がどう変わり、自分は何を望んでいるのかを、いろいろ言語化すべく、色々な曲をピアノで弾いてみる。

 

《どんどん日田どん》の作業はつづく。日田祇園囃子の《水郷節》を色々とアレンジしたり変形すると同時に、水の郷である日田について考えると、水と相撲を結びつける河童の存在が浮かび上がってくる。山本宏子さんの『河童の民俗芸能』という論文を、パトリア日田の中村美波さんが見つけてくれたので、これを勉強中。平家の残党が現在の久留米あたりまで逃げてきて、最後は筑後川に沈む。その化身が河童という設定の祭文が、大分のあちこちに残っている。そして、河童は、

 

音楽を奏して遊戯をなす。

末代に至るまで万民各々のため我この音楽を奏し祭りをなさば、国家安全、五穀豊穣にして、民豊かに牛馬に災いなからしめん。

 

と言うのだ。水郷と河童と相撲、結び付けられないかなぁ。リサーチはつづく。

 

高村木材さんより、ペダル式の板太鼓のスケッチが送られてくる。《どんどん日田どん!》、どんどん膨れ上がるといい。

 

カウンセラーの草柳和之さん、ピアニストの清水友子さんと、パープルリボン作曲賞本選会の打ち合わせ。本選会は、予選通過した作品が一挙に演奏されるコンサートで、一般の方も来場できるので、是非、お越しください。

 

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日田どんと一番太鼓/ピアノの調律/餅つき踊り

《どんどん日田どん!》の作曲作業を進めている。一番太鼓の終わりの太鼓パターンを合唱に組み込めないかを、試行錯誤中。

 

自宅のピアノの調律をどうするか迷っていて、滋賀から上野泰永さんをお呼びしようと思ったが、熊本に引っ越し、今後、熊本で活動をしていくのであれば、熊本で良い調律師を見つけて関係性を築いていかないといけないと覚悟を決めて、新しい調律師さんを頼むことにする。作曲家の光永浩一郎さんにご紹介いただき、ピアノハープ社の内川明さんをご紹介いただき、本日、自宅のピアノを調律していただき、3時間に渡って、丁寧にピアノを見ていただいた。

 

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里村さんに連れられて、「豊川豊年餅つき踊り」の公民館で行っている練習を見学。日露戦争の時、戦地で餅つきを懐かしんだ兵隊が餅つきの真似をしたものがベースで、そこから生まれた芸能らしい。この土地には、相撲取り踊りもあるとのこと。

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講談社ブルーバックスの竹内淳『理系のための微分積分復習帳』を読了。数学の読み物を息抜きに読むのは楽しい。

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とびだす美術館/モーツァルトとベートーヴェン/どんどん日田どん!/微積分

不知火美術館の里村真理さんの企画で、美術館から町に出る「とびだす美術館」(だったかな?)というプロジェクトのアーティストとして関わっている。それぞれのワークショップでは、不知火美術館の収蔵作品の画像を見せて、音楽にしてみたい作品を選んでもらい、そこから音楽をつくり、それを12月15日から始まる企画展会場で展示していく予定。本日は、延福寺を訪ねての打ち合わせ。毎週水曜日の放課後に子どもたちが集まってくる「寺子屋」の活動をされているとのこと。非常に柔軟で意欲的な浄土真宗のお寺。11月30日に絵を選んで歌づくり、12月7日にレコーディングという予定。ワクワク。

 

ベートーヴェンピアノソナタを毎日少しずつ弾いていて、どの曲もベートーヴェン節でシンプルな主題を執拗に繰り返し展開していくので、モーツァルトを弾いてみたくなって、モーツァルトピアノソナタの楽譜も買ってみた。譜面を弾き始めて驚いた。モーツァルトの譜面は、ベートーヴェンに比べて、すっきりしていて、ベートーヴェンが圧倒的に複雑。同時代の作曲家なんだけど、ベートーヴェンが色々新しいことをしたのだなぁ、と思う。実際にモーツァルトを弾き始めると、またまた驚く。とにかく先が予測できない。ベートーヴェンの場合は、執拗に同じようなことを手を変え品を変え出てくるから、初めて見る曲でも先が読めることが多い。モーツァルトの方は、自然に繋がっているのに、どんどん変わっていくし、その変わり方が意外なことが多くて、全然予測がつかず、いつの間にか風景が変わる。ベートーヴェンはセールスポイントを連呼してくれるので、何を言いたいのか明白で、モーツァルトは軽やかにどんどん変化していくので、瞬間瞬間を楽しむお喋りのようで、気がつくと何の話してましたっけ?となる。あまりに好対照だ。毎朝の日課として、ベートーヴェンモーツァルトを一曲ずつ弾くというのを、しばらくはやってみようと思う。

 

打ち合わせから帰った後は、《どんどん日田どん!》の上演台本みたいなものを作成する作業をしてた。日田祇園囃子のフレーズを、他の曲の中にどうやって忍ばせていくのかを、いろいろ試行錯誤。本番は、1月29日@パトリア日田

 

台本作業が煮詰まると、息抜きに数学をする。昨年、里村さんが学芸員資格を取得するために、仕事が終わった後の夜などに、通信教育で授業を受けていた。おそらく、そうやって勉強するのが羨ましくて、ぼくも大学の授業受けたいと思った時に、数学を勉強したくなり、今年になって、YouTubeで数学の授業を探して見てた。でも、大学の講義よりもYouTuberの講義動画の方が面白く、大学の講義はあまり見なくなっていた。しかし、非常に明解な大学の講義を見つけた。MITの微積分の講義動画がおすすめ。毎回50分で、ゆっくり大声で話してくれる。授業がめちゃくちゃ上手い。ところどころで、質問も聞くし、要点はすっきりしてるし、何のノートも見てないし、プロだなぁ。微積分学って英語でcalculusって言うと初めて知った。

 

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佐久間徹さん/《どんどん日田どん!》どんどん構想中

昨夜、佐久間徹さんの訃報があった。インドネシアで何度もお会いしてお話をさせていただいた。ご冥福をお祈りします。問題行動マガジンで徹さんにインタビューを行うことができ、徹さんがご存命の間に公開できてよかった。

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パトリア日田の15周年公演

オリジナル日田ミュージック

《どんどん日田どん!》

林業祇園囃子・相撲の神様大蔵永季をテーマにしたコンサート

を監修していて、上演台本の叩き台のようなものを作っている。原作の紙芝居「日田どん」では、天皇が日田どんの相撲を見てみたい、と言ったことになっているが、日田どんが初めて相撲節会に参加したのが、1071年なので、その天皇後三条天皇となる。『新編 大蔵永季伝』(2007、日田市豆田地区振興協議会)の西別府元日さんの原稿と資料を読み込む。日田どんは、相撲節会では常に「左」の相撲人だったようだ。

 

日田祇園囃子のCDから「水郷節」、「頃は卯月」、「梅が軒端」の3曲のメロディーを譜面に書き起こし、CDに合わせてケンハモやピアノで共演してみる。「水郷節」の方が、「頃は卯月」、「梅が軒端」よりもアップテンポ。

 

パトリア日田の中村美波さんと電話。高村木材さんが作ってくださる楽器は木琴で進んでいるが、拍子木(柝)は必要な気がするので、一つお願いしたい。説明するのに、参考の動画を探したら、打楽器の神田佳子さんが邦夫さんの柝をまとめた動画をアップしてくれている。さすが神田さん。

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とりあえず、第1部は、シーンごとに入れ替わりに出演者が登場してくるイメージが湧く。裏テーマとして、祇園囃子を入れて、それぞれの団体に、少し祇園囃子の《水郷節》のメロディーを入れると、なんとなく統一感が出てくる。

 

1 祇園囃子(誕生)

2 オリジナル木琴(相撲の稽古)

3 合唱団(何度も優勝)

4 チェロとピアノ(父の死)

5 吹奏楽(観音様のお告げ)

6 木レンジャー(木を切り寺社をつくる)

7 全出演者の紹介(フィナーレ)

 

第2部は、木を活躍させたい。日田の林業とオリジナル木琴を活躍させたい。また、1部で別々に登場した複数の団体が合体する演奏を盛り込みたい。より複合的に。これは、オリジナル木琴ができあがらないと、どんな曲になるかが決まらないので、それをもとに吹奏楽と共演したり、チェロとピアノと共演したりするシーンができあがるといい。

 

8 合唱+チェロ+ピアノ+石(たたみ石)

9 チェロ+ピアノ+オリジナル木琴+玩具チェーンソー(相撲大会の招待)

10 合唱+オリジナル木琴(女の子)

11 オリジナル木琴+吹奏楽(あなたの相撲のお相手は)

 

第3部は、相撲と音楽の部。実際に、地元の相撲部に出演してもらえないかを現在調整中。ここは、まだ考え中。

 

12 相撲+ピアノ連弾、相撲+吹奏楽、相撲+オリジナル木琴(土俵入り)

13 相撲+合唱(出雲小冠者)

14 合唱+下駄(優勝した日田どん)

 

エピローグは、これらの融合がうまくやれればいいので、日田祇園囃子相撲甚句が合体し、そこに西洋楽器やオリジナル木琴が加わるような曲が作れればいいかと構想中。

 

15 祇園囃子+チェロ+ピアノ+吹奏楽+合唱+オリジナル木琴(エピローグ)

 

 

 

 

 

苦海浄土/どんどん日田どん!

石牟礼道子苦海浄土 我が水俣病』を読了。熊本に来て、自分にとっての水俣との距離感が少し変わってきていて、不知火美術館での中野裕介の個展を通して、石牟礼道子の世界を体験したが、中野裕介展が終わった今、改めて、石牟礼道子の原作を読んで深みに入り込む。石牟礼道子は、水俣病患者の声にならない声を小説にし、中野裕介は石牟礼道子の小説の行間を、展示にした。熊本在住の作曲家の光永浩一郎さんは左手ピアノのためのソナタ苦海浄土によせる》を作曲した。

 

昨夜、光永さんから、《Waltz for Makoto》という譜面が送られてきた。なんでも、光永さんの夢の中に、野村誠が登場し、光永さんの曲から歌を作ったと言って、夢の中のぼくは、光永さんにCDを差し上げたそうだ。目覚めてから、その曲を思い出して作った曲だそうだ。早速、弾いてみる。光永さんの音楽だが、野村っぽいところも、どこかあるのかもしれない。

 

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今日も《どんどん日田どん!》の作業。日田祇園囃子のCDを聴いて研究したり、台本のリライト作業や、どのグループがどこで演奏するかを考えたり。

 

パトリア音楽工房ワークショップ参加者

少年少女合唱団

大山中学校吹奏楽

チェリスト&ピアニスト

木レンジャー

日田祇園囃子保存会

相撲部

 

 

 

 

世阿弥/どんどん日田どん!

鎌田東二世阿弥 心身変容技法の思想』(青土社)読了。1ヶ月ほど前に読んだ西平直『世阿弥の稽古哲学』は、世阿弥のテキストを読み込んでいく本で、論理が明解で面白かった。鎌田東二の本は、第1章は世阿弥の話だけど、第2章〜第8章まで、世阿弥から脱線しまくり、延々と古事記の話になり、柳宗悦になり、岡本太郎になり、ミシェル・レリスになり、ルイス・キャロルになり、宮崎駿になり、親鸞になり、一遍になり、修験道になり、、、、延々と変容する。そもそもテーマとして掲げているのが「変容」なので、これだけ変容しても仕方がないか。「世阿弥」に関する本というより、世阿弥からの連想ゲームのような本だった。面白い読書体験だった。

 

www.seidosha.co.jp

 

オリジナル日田ミュージック

《どんどん日田どん!》

林業祇園囃子・相撲の神様大蔵永季をテーマにしたコンサート

2023年1月29日

パトリア日田(大ホール)

 

に向けて、2012年に制作された紙芝居《日田どん》(監修:久世みずき、制作:日田古代史研究会、制作協力:大分県立日田林工高等学校PTA)に基づき、野村バージョンの台本を作る。初稿としては、原作に忠実にしつつ、その中に少年少女合唱団が歌うところ、ワークショップの参加者が演奏するところ、などを書き込んでいく。そうすると、次回のワークショップで何をすべきかが見えてくる。ここの場面は、ナレーションではなく、相撲甚句でできないか。だったら、文章を7・5調に書き換える必要があるから、そこはワークショップでやろう、とか。ワークショップの時間も限られているから、どこまで野村が作って、どこまでワークショップでやるかを、考えたり。ある程度、輪郭が見えてきたけど、明日も日田どんに取り組もう。