野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

香港とのオンラインコンサート/霧の音

香港のCCCDのオンラインフェスティバルに出演して、オンラインコンサートを行った。コロナになって増えたオンラインのイベントだが、対面での活動も増えてきて、海外のオンラインイベントに出演するのは、昨年8月のバンコクのシンポジウム以来で10カ月ぶりかな?まず、何が嬉しいって、香港のスタッフたちと事前に行う機材テストや打ち合わせが嬉しい。画面の向こうに香港のCCCDの事務所が見えて、マスクしながら香港の人同士が、ああでもない、こうでもないと、トラブルに対応したりしている。これだけで、香港に来た気分になれる。

 

コロナのこと、香港のこと、ウクライナのこと、色々な思いを巡らせながら即興でピアノを弾いた。暗闇の中で光を求めるようにピアノを弾いた。その後は、草本利枝さんの映像(撮影:岡本晃明さん+里村真理さん)で、佐久間新さんと豊能町牧の田園風景での即興動画を3本見てもらった。高層ビルの大都会でロックダウンされている香港の人々に、日本の田園風景での即興を味わっていただきたかった。チャットでも、いろいろなコメントや質問も寄せられた。佐久間さんも見に来てくれて、少しお話もしてもらった。モックさんのリクエストで、前田文化での「騒音コンサート」の動画も少しだけ紹介。こちらもフル動画を見たい、との声もあがった。最後は、《DVがなくなる日のためのインテルメッツォ》を演奏。暴力のない未来を祈った。香港の方々との交流が嬉しかった。

 

JACSHAとKIACの打ち合わせ。7月3日、波田野州平監督の映画《霧の音》の上映会を兵庫県の竹野で開催。2年前の我々( JACSHA)の城崎(+竹野)でのレジデンスの成果としてのこの映画、各地で上映したい。

 

~竹野の風土を映す~ 映画『霧の音』上映会監督 波田野州平 | イベント | アーティスト・イン・レジデンス | 城崎国際アートセンター

 

塔本シスコ展に向けて、新曲《ウマイレガワ》のピアノパートを自宅で録音。これに、シスコの生家の近くで録音した環境音を加え、声を加えてみる。来週、地元の人に協力してもらい、熊本弁の声を録音して重ねたい。

 

 

20年前と100年前を思って作曲する今

今日は、自宅で作曲。滋賀県立美術館での塔本シスコ展のために。自分のコンサートでもなく、自分の展覧会でもなく、シスコさんの個展なので、その中に野村誠という余所者が入っていっていいのだろうか?と躊躇いがあった。でも、熊本市現代美術館で塔本シスコ展を見た時に、静寂の中で見るのもいいけど、音楽ありだと雰囲気変わるだろうな、と感じた。だから、今、作っている。

 

で、シスコさんの絵をいくら眺めても、資料を色々読んでも、ぼくはシスコさんになれるわけではない。だから、シスコ作品から受け取った野村誠の世界を音楽にする。余所者だけど、自分なりの音楽を作ろう。

 

約20年前、シスコさんが88歳の2001年に描かれた《ウマイレガワ》という絵は、シスコさんの子ども時代の思い出なので、おそらく当時80年前を思い出して描いたもので、今から見ると100年ほど前の光景。だから、シスコさんの絵画に作曲すると、100年前と20年前と現在という3つの時間が重なり合う。ぼくは、現在にいて、20年前と100年前のことを思っているが、20年前にシスコさんは100年前のことを思っていた。

 

だいぶ方針が決まり、曲が姿を現してきた。

 

 

 

 

 

 

 

ガチャ・コン音楽祭/芸術家と子どもたち

びわ湖・アーティスツ・みんぐる2022『ガチャ・コン音楽祭Vol.2』に向けてのリモート会議。財団の福本さん、山元さん、コーディネーターの永尾さん、野田さんと。今週末(6月19日)に、キックオフミーティングを開催(入場無料、14:00-16:30@近江鉄道日野駅)。と同時に、プロジェクトメンバー”ぐるぐる”募集中(10名程度)。詳細はこちら。

 

biwako-arts.or.jp

 

10月23日に計画している今年度のライブのことを中心に話す。アーティストのこと、会場のこと、交通手段のこと、考える要素が色々ある。昨年のシンポジウムで近江鉄道の山田さんが推薦してくれていた愛知高校とのコラボは、高校の模擬試験の日程と重なっていて、今年度は実現せず。だいぶ企画の概要が見えてきた。今週末に再度、滋賀のリサーチやアーティストとの打ち合わせなど必要。

 

企画を現実に落とし込むと同時に、ミッションは何だったのか、ということを、常に考え直す必要あり。滋賀県内に数々のアーティストがいるし、魅力的な場所もたくさんある。こうした人や場所をつまみ食いするような企画では意味がないし、関わりを通して触発され、新しいものが生まれてくる場を作りたい。そういう環境をつくるための土壌づくりのようなことをしている。だから、たった一日のイベントだと考えると、効率悪い。ああでもない、こうでもない、と色々話をしている。でも、そうしたことがじわじわ効いてくるはずだと信じ、やっている。

 

午後は、NPO法人芸術家と子どもたちの理事会。コロナでオンラインになったおかげで、年に一回の理事会に参加できるようになった。2000年に小学校での一番最初のワークショップをした時は、堤さん一人だったのに、今ではスタッフ10人で、ものすごい数の事業を実施している。20年前に初めて理事会をした頃、ぼくたちは30代前半で、これから新しいシーンを切り拓いていくという気持ちもあった。今では老舗のNPOという感じで、老舗ならではの課題もあったし、逆に2020年代に取り組むテーマも色々話し合えた。例えば、昨年開催した勉強会『少年院にいる子どもたちの現状と課題を学ぶ』など。

 

www.children-art.net

 

塔本シスコ展に向けての作曲は、ちょっとずつ進んでいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

邦人作曲家シリーズ/トウモロコシも収穫/香港とのワークショップ/シスコ作曲中

タワーレコードの冊子(ミュゼかintoxicate)に、21年前に掲載された記事が、この度公開になった。32歳の野村誠だが、写真を見ると高校生かいなと思う姿である。この20年で年を重ねたが、あの頃は相当若かったなぁ。好き勝手自由に話していることを、小沼純一さんが記事にしてくださっている。作曲家シリーズとは思えないような内容。

note.com

遠征から熊本に帰ってきたら、すっかり梅雨。今日も雨。庭の畑の野菜たちは元気で、キュウリがでかくなりすぎていたり、ミニトマトが真っ赤になっていたり、ズッキーニが大きくなっていたりして収穫。トウモロコシも収穫。

 

今日は、香港のCCCDのオンラインのコミュニティ合唱団のワークショップだった。昨年、一昨年はオンラインでのワークショップをいっぱいやったし、海外とのワークショップもいっぱいやった。オンラインワークショップで何十人と参加すると、パソコンの画面だと小さいので、オンラインに対応するために1月にモニターを購入した。ところが、最近は、国内で対面の機会が増えてきたので、モニターの威力を発揮できる機会もあまりなかった。久しぶりにオンラインで海外だ。

 

香港は、25年前まではイギリス領だったので、英語を話す人が多い。だから、英語で多くの人は大丈夫なのだが、一応、広東語で逐次通訳をしてもらう。先月まで、第1期のワークショップが行われて、地球温暖化に関する歌を作詞/作曲したようだが、今日からは新たなメンバーらしいので、簡単に自己紹介して、ちょっと準備体操などしてみて後は、広東語で「地球温暖化」をどう言うのか教えてもらうところから開始。何度も言ってもらい、そこからメロディーをつくる。続いて、日本語の「地球温暖化」を発音してもらい、これもメロディーにする。この二つのメロディーをつなげて、これに振りをつけて歌ってみる。その後は、温暖化に関する歌詞を付け加えてみる。

 

途中で、祈りの音楽を、ぼくが即興のピアノと即興の歌で歌うと、それに皆さんも反応しれくれたりする。部屋の中で見つけた音の出るものでセッションもした。途中で、日本の話をしたり、日本の楽器を紹介したりもする。そして、歌の続きをつくる。今度は英語。広東語、日本語、英語の混ざった歌ができた。90分はあっという間だったが、久しぶりに香港に行けてよかった。このワークショップは全4回なので、4週間連続で火曜日の午後は香港。次回も楽しみ。

 

実は、今度の金曜日の夜(日本時間の20:00-21:00)も、香港。CCCDのオンラインフェスティバルに出演。こちら無料のはずなので、日本からでも見られると思うので、どうぞ。

 

https://www.facebook.com/cccd1/posts/5194778753941689

www.art-mate.net

 

その後は、塔本シスコ展に向けての作曲。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鈴木潤との作品づくり

京都の鈴木潤さん宅を訪ねる。二人でアルバムを作ろうと計画中。

 

今日は、ピアノとエレピでのデュオで色々録音した。自由な即興もいいが、潤さんがキーボードベースとエレピでループを作って、そのリズムの上で、ぼくのピアノが遊ぶ感じも面白い。何曲も録ってみた。最後は、ピアノと足踏みオルガンとのデュオも。

 

潤さん曰く、レゲエとか新しいジャンルが生まれる前の感じに近い。確かに、既存のジャンルには全くはまらないけど、エレクトリックピアノアコースティックピアノのデュオで、リズムに乗りながら、ちょっと和風になったりもしながらグルーヴする即興のダンスミュージックって、聞いたことないけど、一つのジャンルになるかもしれないなぁ。

 

楽しいからライブもしたいけど、こんな感じで時々レコーディングを続けていこう。

 

6月17日に香港のCCCDの企画で、オンラインコンサートする。そのための連絡などなど。

 

熊本に戻る。

 

 

 

 

たいようオルガン

水戸芸術館でのリハーサルの後、隙間の時間に、新しくオープンしたスペース「五月の庭」での寺門陽平展を見に行く。寺門さんご自身に会場に連れて行っていただき鑑賞。ご家族の病気とそれに対峙した作家や家族の視点から生まれた絵画やインスタレーションとテキスト。
 
荒井良二さんの絵本を原作に作曲した《たいようオルガン》。全部で14曲もあって、30分に凝縮された作品。水戸芸術館のオルガンの様々なパイプの音色を駆使しまくっての石丸由佳さんの音色づくり+両手両足を最大限に動かしての熱演。そして、小林沙羅さんの美しすぎる歌声が、神々しく降り注いだり、躍動的に楽しく熱唱したり、本当に言葉に表せない素晴らしすぎる演奏だった。昨年よりもパワーアップしての再演。高巣真樹学芸員が繋いで下さった素敵な演奏家たちは、ぼくの曲にベストのお二人で、今日の本番、とんでもなく大成功で!!!!!!7月2日の新潟公演もめちゃくちゃ楽しみ。みんなー、新潟に大集合だーーーー!!!各地のオルガンで再演したい!!
 
帰りの電車の中でも、荒井さん、そして『たいようオルガン』の編集者の佐川さんと興奮して語る。荒井さんと話すと、この30分の楽曲を核にして一本の公演として総合的にプロデュースする構想は次々に湧いてくる。来年、再来年とどんどん進化させていきたいなぁ。素晴らしいチームだけに、このままで終わらせたくないなぁ。
 
たいようオルガン (原作:荒井良二、作曲:野村誠 水戸芸術館委嘱作品)
1 あさがきた前奏曲
2 ゾウバストッカータ
3 賛美歌くさはえてる
4 はたけある音頭
5 DJくもりのくも
6 ビルいっぱい音列
7 あめドラム
8 あめやんで間奏曲
9 ゾウバス追走曲
10 民謡うみのにおい
11 おちゃいただきファンファーレ
12 すないっぱい行進曲
13 ゆうやけカーニバル
14 つきオルガン夜想曲

 

 

ゾウバスはしる〜〜〜〜〜〜。るるるる〜〜〜〜〜〜〜@水戸芸術館

水戸芸術館での長い一日。荒井良二さんとのワークショップ。小学生1〜3年生22人と。『たいようオルガンの世界』。

絵の具塗りまくりの午前中2時間。0.9mx10mの長い巻物の絵を2枚、合計20m塗りまくった。ぼくは、香港で着た絵の具の塗られた服が背中は全く塗られていなかったので、背中を子どもたちに塗ってもらう。子どもたちと直で触れ合わないけど、背中に描いてもらうことで、接触する。対面でコロナ的(若干ディスタンスの)交流。2時間でどんどん絵ができていったぞーー。でも、午前のワークショップが終わった後、展示できるように、荒井さんが塗れていないところに手を加えてたり、塗りすぎて乾かないところを拭ったり、アフターケア大変で、お昼も食べずに仕事する荒井良二(ぼくは一人でランチ)。

 

午後は、楽器を鳴らす2時間。タンバリンの上手な男の子のビートにのせて楽器を鳴らしたり。ぼくもピアノをガンガン弾いて、子どもたちの楽器とセッションした。ピアノ弾いて手が足りなくなって、スタッフの鴻巣さんに合図の役をお願いしたり。雨が降ってくる場面、月オルガンの場面など。。絵本の「たいようオルガン」では、ゾウバスが旅をしていく。だから、途中で旅に出たくなって、リハーサル室から練り歩く。通路を歩き、ホールに移動。ホールの中でも楽器を鳴らすと、子どもたちは客席の椅子に座って気持ちよさそう。「ゾウバスの座席だよーー」、「のりたい人、手をあげて!」、「はーい。」。みんなで記念撮影しながら、旅は続く。外に出て、噴水の前でも写真撮影。外も練り歩く。リハーサル室に戻る。ピアノ運搬用の台車がある。これがゾウバスになって、交代で台車に乗って、ゾウバス走る。ぼくが台車を押していたら、オルガニストの石丸由佳さんがピアノで弾いてくれる「ゾウバストッカータ」。ゾウバスはしるー。道、せまい。道、ほそい。道、でこぼこ。

 

こうしてワークショップの時間が終わって、家族の方々が集まって、ミニ発表会。太鼓を叩きまくったり、パフパフと鳴らしていたりする演奏も、やみくもにやっているようで、いつの間にか微妙に表情がついたりニュアンスがついている。何にも指導してなくても、子どもたちは勝手に上達していったり、表現の仕方を発見していくのだ。絵の前で記念撮影やサイン会などの後、解散。

 

夜は、絵の展示と明日のコンサートへのリハーサル。ソプラノの小林沙羅さんも到着。水戸芸術館のエントランスのパイプオルガンの音色が七変化。石丸さんの演奏と音色の組み合わせが、楽しすぎて素晴らしすぎて色彩豊か。絵本の世界がパイプの音楽に変換されて、超幸せ。そしたら、沙羅さんの歌声がオルガンの音量に負けない天の声みたいに降り注ぐ。教会によくあるオルガン+天使の声のようなソプラノなんだけど、歌われているのは、キリスト教の聖歌じゃなくって、「賛美歌くさはえてる」だったり、「はたけある音頭」だったり。そんな世界の片隅の何の変哲もない雑草とかを愛でる天から降り注ぐ美しい歌声とオルガンの響きに、もうぐっときちゃって、作曲者としては感無量。企画した高巣真樹さん、芸術監督の中村晃さん、芸術館スタッフの方々、音響の技術者の方々、本当に感謝、感謝。明日の本番が楽しみすぎる。

 

ホテルに戻ったものの、荒井さんと二人でプチ打ち上げ。荒井さんの絵本『たいようオルガン』から、野村の楽譜『たいようオルガン』ができて、こうしてコンサート『たいようオルガン』ができると、これを発展させた舞台『たいようオルガン』になってもいいよね。というか、荒井さんが空間作ったら、インスタレーションしたら、絵本の世界が立体的に飛び出した空間できるし、そういうのできたらいいのになぁ。夢が膨らんでいく。ゾウバスはしる〜〜〜〜。るるるる〜〜〜〜〜。泣けるなぁ

 

www.arttowermito.or.jp