野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

大相撲九州場所11日目鑑賞

日帰りで福岡へ。大相撲九州場所11日目を観に行く。コロナ後では初の大相撲観戦。日本相撲聞芸術作曲家協議会(JACSHA)の鶴見幸代さん、樅山智子さん、iichikoホールの八坂千景さんと。

 

まずは、会場の外での一番太鼓を鑑賞。すぐに会場に入るのではなく、周辺を歩き回ると、マンションなどが音を反射して、エコーがずれて重なったり、道路を走る車の騒音に低音がマスキングされて聞こえが変わったりする。それを楽しむ散歩の後、入場。昭和初期の伝説の力士双葉山に関する資料を購入。《オペラ双葉山》創作中なので、貴重な資料。

 

コロナで飲食ができず、声を出しての声援もできないので、会場は静まりかえり、体をパチパチ叩く音などが非常によく聞こえる。聞く芸術家としては、こんなに聞くのが楽しい大相撲の環境はコロナが終わると味わえない特別の体験。今日聞いた音の体験を大切にしたい。

 

あっという間に6時間。幻のあら料理のコースを体験して後、熊本に戻る。

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不知火諾右衛門の墓/いしいしんじの100ものがたり

JACSHA(日本相撲聞芸術作曲家協議会)の鶴見幸代さんが我が家に宿泊。今朝は、JACSHA世話人の里村真理さんと3人で、第8代横綱不知火諾右衛門の墓に行った。不知火諾右衛門(1801-1854)の墓参りをし、せっかくなので鶴見さんと共に不知火型土俵入りを奉納させていただいた。横綱土俵入りをもとにしたヴィブラフォンの曲を書いたのは2年前。會田瑞樹さんのために書いた《相撲ノオト》(2019)を作曲していた時は、すっかり身体化されていた横綱土俵入りの動きも、うろ覚えになっていた。復習しなくっちゃ。

 

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熊本市現代美術館に、いしいしんじさんの朗読レクチャーを聞きに行く。いしいさんの「その場小説」は何度か立ち合ったことがあり、その場で即興的に小説が生まれるスリリングな瞬間は出産に立ち合うような体験だが、今回は、既に書かれた小説をいしいさんが朗読するというもの。こちらは、作曲者による自作自演といった感じの朗読だった。人形劇で自作の人形を操りながらのパフォーマンスは、いしいしんじ劇場という感じで、その場で舞台美術を描き、脳内で人形の動きと言葉と舞台美術を再構築して聞く演劇。聞くだけで熊本のあちこちの風景や時代に連れていかれる。熊本にある風景がいしいさんというフィルターを通すことで、物語になってしまう。そして、企画展をまた見ちゃった。今日も触発される時間をありがとう。

 

 

 

鶴見幸代と熊本散策/日田どん(大蔵永季)と相撲節会

JACSHA(日本相撲聞芸術作曲家協議会)の鶴見幸代さん(作曲家)が熊本を訪ねてくれた。初の熊本とのことだったので、熊本を案内した。熊本を案内すると言っても、半年前に引っ越してきたばかりなので、こちらもあまり詳しくない。そんな中で、藤崎八幡宮の参道に、かつては横綱を考案した行司の吉田司家があったそうなので行ってみた。現在は土地が売却されてマンションになっている。せっかくなので、藤崎宮にお詣りをして、藤崎宮の周辺の社にも次々にお詣りしていったら、ひっそりと「相撲道の神」とあり、日田永季(1056-1104)という相撲人が京都で行われる相撲節会に16歳で初出場し、49歳まで15回出場したことなどが書かれていた。調べてみると、日田永季は、大蔵永季の蔑称で、日田どんの愛称でも知られ、日田神社に祀られているが、なぜか藤崎宮にも日田社がある。夏目漱石の旧居や熊本城なども散策。夜は、JACSHA世話人の里村真理さんも合流。相撲の話、熊本の市電の話、いろいろ語り合う。

 

http://www.hita.ne.jp/~city/dowaok/hitadon.htm

藤崎八旛宮(その2) ~熊本市の神社 | 九州下町おやじの珍道中

河北家の祖先、相撲の神様 “ 日田どん ” を祀る日田神社に参拝。すると…“琴奨菊”優勝! | 楠森堂 福岡うきはで二百年【在来種のお茶】

 

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天皇の音楽史

豊永聡美著『天皇音楽史 古代・中世の帝王学』(吉川弘文館)を読了。歴代の天皇帝王学として楽器を習得していくことを時系列で見ていく本。琴の時代から笛の時代を経て、鎌倉時代になると琵琶の時代になる。秘曲を伝受し御遊でお披露目していく。南北朝時代に、琵琶と笛ですみわけたり、南北朝で共演していたりもする。何の楽器を習得するかが、政治的にも意味を持ったりもするところも面白かった。足利義満が笙を演奏し、秘曲を伝受し、義満の提言で天皇も笙を始めたりしている。そして、笙と箏の時代となる。明治天皇以前は、天皇は楽器を習得し演奏していたそうである。

 

今日も家の片づけを色々していた。重曹は本当に掃除に役立つ。汚れが落ちたりするのは気持ちがいい。明日は熊本市内を散策する予定なので、いろいろ下調べ中。雨が降り始めたが、天気がよくなりますように。

リモート公演/掃除や畑仕事

午前中は、門限ズとボーイズと九州大学のコラボ企画のリモート定例稽古。3月の公演に向けて。複数の地点で開催するリモート公演だと、福岡での指先の小さな動きが、北九州で巨大なスクリーンに投影されていて、巨大な指とダンサーが共演していたりするかもしれない。逆に、そのダンサーの影が福岡の会場の天井に投影されていて、その動きを見ながら、福岡の俳優が言葉を発しているかもしれない。福岡の俳優の言葉がUDトークにより文字となり、その文字が北九州の透過スクリーンの中で立体的に動き回っているかもしれない。北九州のピアニストは、その言葉を拾いながら、ピアノで弾き語っているかもしれない。こうやって考えた時、福岡と北九州の2地点で、リモートでお互いの表現に反応しながら共演しているのだが、それぞれの会場で行われていることは全く違う現象になったりする。リモートの共演をする場合に、お互いの体験を限りなく近づける方向を目指すのか、それともお互いの体験の差異を敢えて広げていくのか、と考えると、後者の方が面白いと思うので、後者を模索中。それにしても、モリッチ(森裕生)は対話で相手の言葉を引き出すの上手だなぁ。九州大学の大学院生たちの声をたくさん聞けたのも面白かった。

 

【報告】「演劇と社会包摂」制作実践講座オンラインワークショップ&ディスカッション|九州大学ソーシャルアートラボ

 

来週は、我が家に来客ラッシュなので、家の片付けなどを大慌てで開始。次の作品(フィリピンのダヤンとのプロジェクト)の作曲に取り組みたいところなのだが、まずは片付けることが作曲。畑の大根やカブを間引いたり、洗濯機を何度もまわしたり。里村さん個人蔵の作品をリビングの壁面に展示したり。

 

今日の「四股1000」は大相撲の幕下上位から十両を観戦しながら。2時半ー3時は、高砂部屋の力士が次々に登場し、呼出し邦夫さんの美声も満喫でき、行司の木村朝之助さんの裁きも見られるゴールデンタイム。

 

大相撲を観戦後は、色々買い物にも出かけて、明日も家の片付けが楽しくなりそう。

 

月食/ピアソラセブン完成/映像ドキュメント

今日は満月だった。夕方、東の空を見ると月食で、ほとんど隠れていて、おおっ、となった。徐々に満月になってった。

 

アルゼンチンの作曲家アストル・ピアソラ(1921-1992)の生誕100年を祝して、アコーディオンと弦楽五重奏のための《ピアソラセブン》を作曲していたが、本日、校了して譜面を発送。2月に予定されているコンサートのアンコールで初演の予定。ベートーヴェンピアソラが重なり合うような音楽だけれども、少しだけラーメン屋台のチャルメラも登場し、微かに空耳のように相撲太鼓が鳴る瞬間がある。でも、基本は「なんちゃってピアソラ」みたいな曲。片岡祐介さんだったら、どんな「なんちゃってピアソラ」やるかなぁ。

 

音まち事務局と映画監督の甲斐田祐輔さんとの打ち合わせ。昨年度のオンラインでのプロジェクトを、以下の素晴らしい映像にまとめていただいた甲斐田さんと、今年度の件での打ち合わせ。

 

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昨年度のこの動画も、ドキュメントであると同時に、様々な事象が時空を超えていくものとなった。今年度も何かのイベントの記録映像というのではなく、映像ならではのやり方で複数の場所や時間が混ざり合う再構成された新たな世界を提示していただくのがいいのでは、と色々夢が膨らんだ。

 

その後、事務局と打ち合わせ。年度の前半はオンラインが多かったので、12月、1月も東京に行って、対面とリモートを組み合わせた活動を、いろいろやる予定。

 

ピアソラセブン/門限ズ+ボーイズ+九州大学+北九州芸術劇場+ヒビノ

アコーディオンと弦楽五重奏による《ピアソラセブン》を作曲。《Beethoven 250 -迷惑な反復コーキョー曲》の終わりの部分をアンコール曲としてアレンジするという委嘱なのだが、そちらの曲は曲の流れで意味があるので、そのままアレンジするわけにもいかないので、結局、新しい作品として書くことになっている。ベートーヴェンの生誕250周年に交響曲7番のために書いた曲から一年経って、ピアソラ生誕100年を祝する曲になるので、《ピアソラセブン》と名づけた。ウルトラセブンとは特に関係なし。そして、今日、全部書き上げようと思って、細かいところの手直し、推敲なども含めて色々書いたのだが、何かパソコンの操作を誤ったのか、データが消滅してしまい、昨日のデータから書き直すことに。おそらく曲の後半の80小節くらいは消滅してしまったので、そこから記憶を頼りに復元作業。でも、ただ単に復元するだけだとあまりにも悲しいので、微妙にいろいろ変えてみた。データの保存はこまめにやってたのに!!!

 

本日は、昼間に、門限ズとボーイズと九州大学北九州芸術劇場とヒビノによるミーティングがあり、インターネットを介して2地点で公演を行う舞台技術セミナーのための公演の打ち合わせ。劇場と劇場を回線でつなぎ、映像や音響などのデータをそれぞれの会場で再現したりすることで、リモート共演する公演をどうやって組み立てるか、に取り組んでいる。そこに、九州大学と3年間続けた門限ズとボーイズによるコラボでの障害と表現に関する蓄積が注ぎ込まれる。

 

夜も門限ズとボーイズと九州大学でのリモートのクリエーション。月に1−2回のペースでオンラインで集まり、ゆるやかに創作をしている。創作と言っても現時点では具体的なシーンを作っているというよりは、表現の実験を続けていて、相互理解が深まるとともに、公演のシーンの種になるようなものが数多くできている。