野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

呼出しさんの変奏曲

気がつけば、七夕。昨年の今頃は、香港の大詰めで、路面電車でのコンサート(7月2日)、施設内でのツアーコンサート(7月5日)を経て、6時間のファシリテーション講座第2弾(7月7日)、ツアーコンサートその2(7月8日)、住宅地でのコンサート(7月10日)と怒涛の最後の1週間だった。あれから一年。「問題行動ショー」は実現した。あの香港3ヶ月レジデンスについて、じっくり振り返って文章などにまとめる時間がとりたい。11月の香港でのコミュニティミュージックの国際会議に向けて、なんとかしたいなぁ。

 

そして、今日から大相撲名古屋場所が始まった。ぼくの方は、今日も自宅で相撲の稽古。昨日は、呼出しさんの動画を聴きまくったので、今日は、本格的に作曲スタート。おそらく、呼出しさんの呼び上げ(力士の四股名を呼びあげる歌)に基づく変奏曲になる見込み。ということで、今日は色々な変奏曲を考えて、スケッチをして過ごすことに。モーツァルトだったら、どう変奏するだろう?ルトスワフスキだったら?ケージだったら?ライヒだったら?宮城道雄だったら?ショパンだったら?伊福部昭だったら?ピアソラだったら?カウエルだったら?などなど、と妄想するだけでも楽しい。

 

ということで、ブレインストーミングの時間が楽しく過ぎ、概ね方針がかたまったので、ついに譜面を書き始める。世界初演は、12月11日(@豊中市立文化芸術センター小ホール)の小川和代ヴァイオリンリサイタル。

 

ということで、7月14日に、十和田市現代美術館で「しょうぎ作曲」のワークショップをするので、それまでに書き上げたいと思っている。おそらく、書き上げられる見込み。ちなみに、十和田市現代美術館でやっている現在の企画展も面白いので、まだ見てない方は是非。

 

towadaartcenter.com

 

 

 

 

邦夫さんの呼び上げは最高だ

小川和代さんのための新曲を作曲する。テーマは、相撲。これまで、様々な音楽に興味を持ち、様々な音楽文化から影響を受けて、作曲をしてきた。そんな中で、本腰を入れて研究したいと心から思うのが、相撲だ。2008年、JACHSA(日本相撲聞芸術作曲家協議会)を結成以来、その思いは強まる。しかし、相撲の魅力をどうやって音楽にしていけばいいのか、なかなかとっかかりがなかった。

 

今から5年前、一ノ矢さん(高砂部屋マネージャー)に出会ったのが、大きな転機だった。相撲甚句を教わること、四股やテッポウなどの身体技法を教わること、突然扉が開いた。

 

相撲に関する文献も、何十冊と読んだ。新田一郎著「相撲の歴史」、山田知子著「相撲の民俗史」などは、特に愛読書となり、何度も読み返した。野村誠という作曲家は、子どもとのワークショップ、しょうぎ作曲、など、人々と交流することで、自分独自の作曲の方法を編み出してきた。しかし、そうして編み出した自分の音楽を超えていきたい、新たな作曲の地平に辿り着きたい、という創造への衝動がある。そして、そのために、相撲を徹底して学んで、新しい音楽の地平を切り開こうと思った。

 

だから、作曲するために、いっぱい学びたい。今日は、とにかく、邦夫さん(高砂部屋呼出し)の力士を呼び上げる呼び上げの動画を、数百回くらい聴いた。聴いても聴いても、発見がある。新曲のためのスケッチもしているけれども、それよりも邦夫さんの声に耳を傾け、呼び上げのエッセンスを体得したい。自分でも、何度も邦夫さんの声を真似して、呼び上げてみる。

 

ということで、新曲は呼び上げをテーマに作曲します!

 

jacsha.com

 

 

 

 

相撲の復習

午前中、鍼灸に行き、体調を整えてもらう。今日から、小川和代リサイタル(12月11日)のための新曲の作曲に着手。小川さんのリサイタルに、JACSHA(日本相撲聞芸術作曲家協議会)の3人の作曲家(鶴見幸代、樅山智子、野村誠)が相撲に関する新曲を書き下ろすことになっている。とりあえず、「問題行動ショー」の余韻がまだ残っていて、しかも都城の濃密な3日間の余韻も残っているので、すぐに相撲で作曲というモードにならないので、今日は、相撲に関する資料を読み返したり、方針をかためるために、相撲に関することを、いろいろ復習していた。こうして作曲してみようと思う時に、もっと資料を整理できていたら楽なのに、と思う。とりあえず、この作曲の機会に、少しずつ整理して、曲をつくるだけでなく、本をつくることも同時に進められたらな、と思う。

 

というわけで、高砂部屋呼出しの邦夫さんのワークショップの動画を見直したりして、呼び上げを復習中。これだけでもヴァイオリンの曲、書けるなぁ。これまでの相撲のリサーチの中に、いろいろ作曲したいテーマが山ほどある。方針がおおよそかたまってきた。

 

 

雨上がりの都城

昨日まで大雨だったけど、今朝は雨があがった都城にて。本日は、事業発達支援事業所カラーズに再び。また違ったメンバーとワークショップ。こふく劇場の永山さんも見学に来られる。

 

カシオのキーボードを床に置いて即興をしているうちに、徐々ににじり寄ってくる子どもが鍵盤を弾く。小さい子どもなので、弾こうとしてバランスを崩したりして、手や足を鍵盤についてバランスをとる。その鍵盤の持続が面白いので、音色をピアノの音色からオルガンに変えると、ジャーンと音が持続する。子どもによっては起き上がっているのが大変なので、寝転がって参加してもらったりする。キーボードに付属のマイクに興味を示し、気がつくとマイクで鍵盤を演奏したり。うーむ、面白いし、自由だ。太鼓を叩いていると、太鼓の皮に手をあててくる子。手を当てているときと当ててない時で、もちろん太鼓の響きは違う。振動を感じているのか、無意識に触っているのか。いろいろ面白いのだ。途中、演劇のようになったりする瞬間もある。間が面白い。ということで、3日間の滞在終了。コーディネーターの徳永さんと色々打ち合わせ。年明けに来る次回には、いろいろ発展させてできそうな手応え十分。

 

大阪に飛行し、京都に戻る。帰りの道中に、A Polish Renaissanceを読了。20世紀後半のポーランドの作曲の巨匠たち。初期のクラスターの前衛的な作品で知られるペンデレツキも、後半は新ロマン主義的な聴きやすい音楽をたくさん書いたみたいだし、交響曲第三番の爆発的ヒットで癒し系作曲家のように思われるグレツキも、もちろん初期には様々な前衛作品を書いていて、それぞれの作曲家の一断片がたまたま紹介されたり有名になっていたりして、実はいろいろ知らない側面があるものだ、と思いながら読む。いろいろ聞いてみたくなった。アイヴズとメシアンを絶賛した上で、その後の現代音楽は終わっていて興味なし、と言っているグレツキの作品も、いろいろ聞いてみよう。

 

このグレツキの曲も、途中で狂乱のポルカが出てきて、本当にクレイジー

 

Górecki's Kleines Requiem für eine Polka played by the London Sinfonietta - YouTube

 

ポーランド語覚えたい。とりあえず、ジン・ドーブリ!イェステム、マコト!だけ、覚えよう。

 

 

 

 

 

 

今日も2セッション

大雨の都城に滞在中。午前中は、社会福祉法人ゆいま〜るにて、ワークショップ。非常に自由な二人が、手を叩いたり、楽器を鳴らしたり。キーボードを足で弾いたり、頭で弾いたり。そうした自由なノリにはついていけない感じの子が、じっとぼくを見ているので、試しに、「12 12」と声を出しながら太鼓を叩いたら、「1」に合わせて太鼓を一生懸命叩いてくれた。自由は苦手だけど、合図があればやりたかったんだと思った。彼女は、これまで他のワークショップなどでも臆して自ら踊ったり楽器をしたりすることはなかったらしく、彼女が楽器をやったり踊ったりしたことは、印象深かったことらしい。

 

午後は、障害者支援施設みどり園に行く。20名ほどの入所者の方々との音楽。キーボードで野村がしばらく即興で演奏する。途中から手拍子などで参加してくる方がいる。その後、楽器を配って、みなさんと演奏。いろいろな形で参加してこられる方々。太鼓を複数並べて、ドラムセットのようにして叩く人。ウッドブロックで太鼓を叩く人。鳥の人形で音を出して楽しむ人。床を這いつくばって移動する人。立ち上がって揺れている人。などなど。ドラムセットのように叩く人は、ちょっと特別扱いして、野村とドラムセッションもやってみた。楽しい時間だった。

 

帰り際に職員の方が、女の子を指し示し「彼女が音楽の活動の場に普段いられないんです。その彼女がこの場にいられて楽器をやっていたことが、本当に嬉しくて涙が出ました。」と言われた。普段を知らないので、いつも楽しんでいる人なんだと思っていた。野村が来たことで、その人の違った側面が見えるのであれば、幸いだ。

 

それにしても、ホールがアレンジしてくれて、こうして色々な施設に訪ねていけるのは、ありがたい。そして、こうして一緒に音楽をさせていただく機会をいただけると、こちらにとっても、音楽の勉強になる。ぼくだけでは、こんなことは実現できないので、本当に感謝。

 

 

 

やばいものがある、やばい

先月に引き続き、都城に。本日は、事業発達支援事業所カラーズの放課後支援教室にて、ワークショップ。最初、一人の少年が繋がれている機械が、心臓の鼓動のピッ、ピッ、ピッというパルスを発しているのが、メトロノームのようだったので、これとキーボードで共演するように即興。鼓動との共演の間、肢体不自由の男の子は、寝転んでいる状態で、しかし、魅力的な動きをしていて、優れた舞踏ダンサーのように見える。

 

その後、放課後に帰ってきた車椅子の高校生が、楽器を見て、「やばいものがある、やばい」と言う。それを歌詞にして、ぼくが「やばいものがある、やばい」と歌う。この「やばいものがある、やばい」の歌を歌いながら、みんなで太鼓や楽器を鳴らしていく。

 

楽器がどんどん自由になってきたので、ぼくも太鼓の方に行って、一緒に太鼓セッション。人形がこわい女の子がいて、人によって「やばいもの」は色々。身体障害と言うが、座っている姿勢などをみると、かえって柔らかいところも多く、できるだけ彼ら/彼女らの姿勢を真似して楽器を演奏してみる。ストレッチになるし、いろいろ体の使い方で発見がある。

 

最後に、「一緒にピアノを弾こう」とキーボードでのセッションに誘ってみる。一人が、鍵盤ではなく、プリセットの音色を変えるボタンに興味を示したので、音色を変えて遊んでみる。ドラムを選ぶと、高音の鍵盤は、「いち」、「に」、「さん」、「し」、「ご」と喋ってくれるので、これが面白く、ちょっとラップのようになったりしつつ、セッションが続いた。

 

というわけで、のんびり音楽で交流し、こちらもリフレッシュすることができ、良い時間だった。ありがとう。感謝。

 

 

 

問題行動トリオ

7月になった。昨年の7月2日に、香港の路面電車(トラム)でコンサートをした。あの感動的な出来事から一年経って、一昨日、「問題行動ショー」が実現してしまったことが、驚き。一年後の今頃は、どうしているのだろう。

 

砂連尾さん、佐久間さん、十和田市現代美術館の里村さん、と2020年の新企画の打ち合わせをした。問題行動トリオが、これからいろいろなところで、問題行動を展開していけるといい。

 

久しぶりに整体に行って、骨をいろいろ整えてもらった。

 

野村が考案した「しょうぎ作曲」の図形楽譜より「1999 CALENDAR」(共同作曲者=片岡祐介林加奈山辺義大)が、3日後よりロンドンのFive Years Galleryにて展示される。詳細は、こちら。

 

www.artrabbit.com