野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

日本の作曲2010-2019

『日本の作曲 2010-2019』(発行:サントリー芸術財団、発売:アルテスパブリッシング)が届いている。片山杜秀さん、白石美雪さん、長木誠司さん、野々村禎彦さんの4人による座談会により、88人の作曲家の160作品を論評というもの。

 

まず、読む前に思ったことが、4人の批評家が野村よりも年上の方々で、20代、30代、40代の批評家が座談会に加わっていないことに驚いた。若手の音楽評論家っていないわけはないと思うので、あくまでこの世代の批評家から見た2010-2019という座談会として読もう。

 

中をパラパラめくると、作曲家の作品について4人が感覚的に印象を述べる対話が多い。例えば、

 

野村さんは一貫しておもしろい活動をされていますが(野々村)

 

これ(小出稚子《花街ギミック》)を最初に聴いたとき、ほんとうに腹が立ってきたんです。まさに会田誠の作品見てウってくる感じ。(長木)

 

三輪さんの作品も、聴いているとおもしろいんだけど、同時に暗澹たる気持ちになってくる。あまりそんなに重たいことを問わないでほしいなといつも思ってしまう、もう少しぬるま湯に浸っていたいなと、凡人は思ってしまうわけですけどね。(長木)

 

伊左治さんの曲を聴くときは半分つまらないと思って聴くのが正当化なと思っているんですけど、これは私にとってその意味では特殊な作品でおもしろかったです。(長木)

 

真面目な論だと思って読むと苛立つかもしれないが、雑談を盗み聞きしているつもりで読むと気楽に楽しく読める。それぞれの作曲家については、きちんと調べて勉強すれば情報はネット上に溢れているはずだから。せっかくだから、このお喋りから音楽を想像して楽しんでみようと思う。

 

ちなみに、樅山智子、鶴見幸代、中村典子、藤家渓子、野口桃江、牛島安希子、増田真結、池田萌、やぶくみこ、近藤浩平光永浩一郎、夏田昌和などの作品は全く選ばれていなかった。これらの作曲家も、2010-2019年に非常に意味がある活動があった。

 

野村誠の《老人ホーム・REMIX #1》に関して、記録され編集された映像に合わせて野村が生演奏を重ねるという形態に対して、「安全」な形というコメントがあり、驚いた。特別養護老人ホームのお年寄りの体調を考えると、生演奏での出演は不可能に近いので、あの形態は当時の必然。インターネットの速度が速くなり、オンラインでの出演も可能な時代になってきたので、現在であれば、違った形態での共演もあり得るだろう。

 

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