野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

野村幸弘とギャラリー幻想工房/宇宙創成

常滑でグレンダ・レオンのインスタレーションを演奏する濃密な5泊6日が終わり、名古屋に移動。岐阜大学の美術史の教授でアーティストの野村幸弘さんが名古屋でスペースを借りてGallery幻想工房を始めたというので、どんな場所かを見に行く。幸弘さんとは、横浜トリエンナーレ2005で発表した《ズーラシアの音楽》、インドネシアの山奥でのセッションを記録した《Bukit Ponjon》など、様々な映像作品をつくった。

 

幸弘さんはイタリア美術史が専門だが、画家でもあり、ギャラリー幻想工房に行くとご自身の絵画作品やオブジェが数限りなく並んでいる。幸弘さんの絵は建築や階段が描かれることが多く、絵の中に人物が不在であることが非常に多い。その不在の風景を見ると、これから入場するであろう人物のことや、あるいは退場してしまった人物のことを観客は勝手に想像してしまう。

 

幸弘さんとランチをご一緒していたら、隣に座っておられた見ず知らずのご婦人から声をかけられた。ベトナム人からベトナム中部の料理を教わる教室に通っているお話などを聞いた。国際芸術祭あいち2022のこともご案内した。ご婦人はご親切に、ぼくを駅まで車で送って下さった。

 

サイモン・シン著(青木薫訳)『宇宙創成』を読了。同じ著者の『フェルマーの最終定理』があまりにも面白かったので、別にビッグバンについて読みたかったわけでもないのに買ってみたら、これが驚くべきほど面白かった。古代から現在に至るまでの科学者たちが宇宙をどのように理解したかという試行錯誤の歴史を順に追っているだけなのに、時代の先を行き過ぎた科学者たちの苦悩や葛藤が描かれたり、新奇なアイディアが最初全く受け入れられなかったり、全く違ったことを研究していたのに偶然大発見をしてしまったり、自分の理論を立証するために巨大な望遠鏡を作るためにスポンサーやパトロンを探したり、ナチスや戦争や共産主義によって研究が妨げられたり、、、、。グレンダの天体に関する展示を演奏した間に、宇宙論をめぐる数千年の旅を終えることができ、無事に熊本に帰ってきた。