野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

棲家のテキスト/野田幸江『植物のありさま』

3月5日、6日、京都芸術センターでダンス公演《棲家》に出演する。当日パンフに掲載する原稿の執筆、なかなか難航していたが、ようやく書き上げる。当初400字でと言われていたのに、1700字になってしまった。書きたいことがありすぎて、これでもかなり削ったのだが。バッハについて、太田省吾について、作品制作の過程で思ったことについて、書いているうちに、いろいろ発見もあり。原稿を書いているうちに、バッハの《アリオーソ》関連の楽譜を楽譜専門店でチェックしたくなり、ケンプ編曲の《アリオーソ》の楽譜も購入し、これに乗じて余暇の楽しみとして、ケージ、ジョリヴェ、チャベスピアノ曲の楽譜も買う。

 

昨年の滋賀での『ガチャ・コン音楽祭』でお世話になった美術家でお花屋さんでもある野田幸江さんの個展を見に行った。実家の花屋を継ぎ、現代美術家であり、その二つが乖離せずに共存する活動をされている野田さん。昨年は水口を散策して雑草を集めてインスタレーションするワークショップで講師をしていただいた。野田さんの展覧会を見るのは初めてで、楽しみに足を運んだが、想像を超える本当に美しく複雑に自然で人工的な作品に、ただただ感嘆し、時間が流れるのを忘れて、長時間、森を散歩するように、ギャラリーの中を行ったり来たりして、過ごしてしまった。本当に素晴らしい。それは自然に人間が手を加えたことで生まれる奇跡の美しさなのだけれども、自然を征服しようとするわけではなく、自然に脱帽するわけでもない。細密画を描いているような野田さんの細かな営みさえも、全てが自然であると感じられる。そうなのだ。敢えて矛盾する言い方をすると、全ての作意が自然であった。

 

そして、展示の仕方もよかった。同じ手法で作った作品が何点もあったりするのだが、それらは決して隣には置かれていない。だから、展示を巡っていくうちに、少し前に見た作品と兄弟のような作品に出会う。また、少し進むと、別の作品との親戚の作品に出会う。そうやって巡っていくうちに、再び同じ作品を見た時に、見え方が変わっている。気がつくと、何度も巡っている自分に気づく。超おすすめなので、お時間があったら是非。

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ということで、滋賀のリサーチから始まった1週間の最後も、滋賀在住の野田さんの展覧会だった。京都のホテルにチェックイン。