野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

太田省吾→きたまり→由良部正美/Ombra della mente/奇想の系譜

BnA Alter Museumをチェックアウト。秋のアーティスト・イン・レジデンスの作品が1ー10階までの非常階段のところどころに展示してあり、これを鑑賞するために、階段を10階まで上って下り、展示と運動を楽しんだ。車椅子の人や足の不自由な人などが鑑賞するために、何か工夫あるのだろうか?高いところから京都市内を見下ろすことはあまりなかったので、景色も面白かった。

 

午後は、振付家のきたまりさんと、ダンサーの由良部正美さんとのリハーサル。その準備も兼ねて、バッハのカンタータBWV156の1曲目をピアノ用に編曲し楽譜を書いた後、リハーサルに合流。太田省吾の戯曲《棲家》をダンス化する試み。戯曲に忠実にダンスを作っているので、ぼくも戯曲に忠実に作曲をして準備しているが、今日の稽古を見るまでは、まだ雲を掴むような感じだった。でも、今日、稽古を見て、非常に明確に方向性が見えて、音楽で何をすればいいかも見えてきた。出演者が3人いる演劇をソロダンスにすること、台詞がある演劇を言葉のないダンスにすること。そうすることで、戯曲を読んだだけでは見えてこなかった作品に内在していた別のドラマが浮かび上がってくる。太田省吾の戯曲は能のように感じられたりする。ぼくがピアノを弾くことは、現実と夢幻の世界の境界を越えたり、此岸と彼岸の境界を越える仕事でもありそうだ。そうだよなぁ。

 

遠征は終わり、熊本に戻る。空席の多い九州新幹線薬師寺典子さんからPierre Jadlowskiの《Ombra della mente》の全編動画を特別に送っていただき鑑賞。素晴らしすぎる熱演にも《棲家》のヒントを得る。30分近い熱演を3分に編集した動画は公開されている。

 

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辻惟雄の『奇想の系譜』を読了。当時は一般にあまり知られていなかった岩佐又兵衛狩野山雪伊藤若冲、曾我簫白、長沢芦雪歌川国芳の6人を取り上げた50年前の意欲作。図版も多くて夢中になって読んだ。