JACSHA(=日本相撲聞芸術作曲家協議会)のKIAC(=城崎国際アートセンター)レジデンス七日目。「オペラ双葉山 竹野の段」創作中。
高砂部屋マネージャーの一ノ矢さんは、毎朝、高砂部屋の力士と朝7時から四股を200回踏んでいるそうで、本日は、一ノ矢さんと一緒にこれを体験しようと、アートセンターのホールで、腰を深く下ろす四股を200回踏む。舞台上で踏んでいると一ノ矢さんの四股の振動が床を通して伝わってくる。四股という波動。
朝食後、養父市奥米地の水谷神社へ出発。片道1時間、車2台で移動。JACSHAに大きな衝撃を与えたネッテイ相撲が行われる聖地で、本当に美しい風景と音風景の集落。これまで連絡がつかなかったネッテイ相撲保存会の足立さんともお会いすることができる。神社でお参りをし、木と交流をし、双葉山のように大木のように立ってみようとし、カエルが鳴き、鳥が囀り、虫やニワトリの声が響き、小川のせせらぎが聞こえる。地域おこし協力隊の鵜殿さんともお話。再び境内で静かに心で声を出して、JACSHA式ネッテイ相撲聞を試みる。環境の音が耳に飛び込んでくるだけでなく、思いっきり足を踏み出した時に、顔が地面のすぐ近くまで届くと、地面に生えている苔や草が語りかけてくる。ネッテイ相撲は、単なる四股ではない。四股をすることで、世界に耳を開き、大地に接触し、地球の声を聞く。そんな体験だと感じた。そして、境内から階段を下りていくと、土俵入りをしていたのだ、と感じた。土俵入りとは、土俵に入り、土俵から出る。そこには結界があり、非日常から日常に繋がっている。
朝9時半に出発し、10時半に到着したのに、気がつくと2時間以上の時が流れている。帰り道のベリッテで美味しいランチをすませて、城崎に帰り着くと15時。一ノ矢さんがアートセンターをチェックアウトし、壁にサインをして後、温泉寺に登る。温泉寺の住職のお話を聞き、交流し、本堂で山々を見ながら四股を踏む。温泉寺住職から城崎温泉の古式入湯作法をデザインした手ぬぐいをいただく。お風呂に入りながら、この手ぬぐいで体を洗い、手ぬぐいに書かれた念仏を唱えるらしい。これに触発されて、JACSHAフォーラムを手ぬぐいにする案が浮上。
東京に帰る一ノ矢さんをお見送りの後、旅館小林屋の若旦那であり画家の冬森さんのお招きで、懐石料理をいただく。城崎温泉に滞在しながら、旅館の中に入り、お食事をし、お風呂をいただくという体験をさせていただく。そして、冬森さんの作品を見せていただいたり、交流をする。カナダの路上で絵画を販売していた話、日本人と温泉文化、旅館経営とアーティストの二足のわらじ、ボールペン絵画、コロナ禍の詩作などなど、いろいろな話を聞かせていただく。くつろいで語り合い、夜もふけ、歌が歌われる。これが、また何かの序章なのかもしれない、記念すべき一夜。実は、ぼくの誕生日。
アートセンターに戻り、ハッピーバースデイを歌いながらの四股を踏んで、24時を迎えた。これで、滞在7日目の濃い1日が終わる。