野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

JACSHA城崎レジデンス 六日目 一ノ矢さんの包容力

JACSHA(=日本相撲聞芸術作曲家協議会=樅山智子+鶴見幸代+野村誠+里村真理)のKIAC(=城崎国際アートセンター)でのレジデンス6日目。

 

午前、一ノ矢さんを交えての四股1000。同時平行で、野村と樅山のぶつかり稽古。野村も樅山も、相手の発言をいなしたり、肩透かしをしたりせず、真っ向から受け止める。野村も樅山も、自分の意見をまっすぐ全力でぶつける。ぶつかり合いは、お互いの信頼がないと、怪我をするし傷つくし再起不能になる。遠慮したり手加減をするのも失礼だし、それではぶつかり稽古にならない。創作をする上で、時々ぶつかる。今朝もたっぷりぶつかり稽古をして、いろいろ吐き出す。創作していく上で、いっぱい信頼して、いっぱいぶつかり合いたい。衝突を恐れずにぶつかり合える関係は、本当に尊いと思う。ありがとう。

 

今日も竹野に行く。先日、竹野駅前の喫茶店パンプキンで出会った愛育班の浪華さんのお店「亀正」にてランチのラーメン定食を食べる。民宿だけれども、閑散期の週末だけラーメンランチをやっている。元力士の一ノ矢さんをご紹介、会話も弾む。

 

竹野小学校の子どもとバッタリ出会い、手をふってもらえて嬉しい。今度、竹野の町を楽器を奏でながら練り歩きたい。観光協会の青山さんに連れられて、竹野の相撲に関する資料がある田中邸に向かう。青山さんに、ヴァイオリニストの小川さんのお母さんの旧姓をお伝えすると、なんと青山さんのお宅のすぐ裏にあり、しかも青山さんが自宅を建て替える時に、そこに住んだことがあると言う。小川さんのお母さんが7歳まで過ごしたというお宅を訪れる。あまりにも、偶然の必然の出会いが続き、驚く。

 

田中邸で展示されている資料を見る。古い写真、資料から、昭和初期の奉納相撲の記念写真などを見て、想像する。演歌「猫崎半島」の楽譜があり、鶴見と熱唱すると耳から離れなくなる。

 

猫崎半島でロケ。映像の波田野さんが選んだ場所で、一ノ矢さんの相撲甚句を撮影後、JACSHAの3人が演奏し練り歩く様子も撮影。樅山:ソプラノサックス、野村:鍵盤ハーモニカ、鶴見:三線で、竹野相撲甚句を演奏。ちんどん屋ではないが、このトリオのサウンドが新鮮!竹野の町も練り歩きたい。

 

一ノ矢さんと、竹野町内の相撲塚を2箇所巡って後、醤油屋さんに入ると、「相撲と音楽の方々ですね」と声をかけられる。竹野の人々に徐々に覚えられている。

 

かつて高砂部屋のちゃんこ長だった一ノ矢さんが、本日は15分でできるクイックちゃんこを伝授。美味しくいただいて後、20時よりJACSHAフォーラム2020、「JACSHAのオペラ双葉山」について、一ノ矢さんと語り合う。

 

「オペラ双葉山」は、単なるオペラではなく、単なる舞台芸術でもない。それは、狭い意味での総合芸術などではなく、舞台であり、プロセスであり、生活であり、祈りであり、表現であり、交流であり、相撲であり、音楽であり、祭りであり、パーティーであり、遊戯であり、芸能であり、伝統であり、矛盾であり、社会運動であり、世界変革であり、、、、、という意味での総合芸術だ。でも、相撲とは、そもそもそうなのだ。相撲を単なるスポーツやビジネスにしてしまってはつまらない。同様に、音楽も単なるアートやビジネスにしてしまってはつまらない。こんなに色々なものを懐深く受け入れる、そんなに大きいもの。それが「オペラ双葉山」だ。そして、一ノ矢さんの言葉を一つ一つ聞いていくと、一ノ矢さんの包容力、なんでも受け止めていく力に、驚愕する。素晴らしすぎる。

 

里村さんは、竹野町史をリサーチ中。竹野にどんどんのめり込んでいく。これは、まだ序章なのかも。

 

4年前 2016年10月に「JACSHA土俵祭り in 岩槻」開催。

3年前 2017年10月に木村朝之助さんワークショップ。

2年前 2018年10月に、城崎レジデンスで、ネッテイ相撲と竹野相撲甚句のリサーチ。

1年前 2019年12月に、豊中で小川和代リサイタルで、JACSHA新作発表

 

こうして、ぼくの51歳の1年間が終わっていった。明日は、朝7時に四股を踏むことに。誕生日に朝7時に四股が踏めるのは、特別な体験。