野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

格差と分配のワークショップ

 今日は、台湾の友人と連絡をとった。台湾でもお店はあいていて、みんながマスクをしていて、だいたい家にとどまっている、とのことだった。概ね、日本の状況と似ている。ポーランドの友人から、隔離の歌の動画が送られてきた。世界のあちこちで友人たちがバラバラに同じように家に閉じこもり、模索している。こんな動画だ。

 

https://www.youtube.com/watch?v=BL3ZhYaBZvE&feature=youtu.be&fbclid=IwAR3sLJO_cV_NXTnxzFOwiKcMDgBWHInrrF9cEjuhyfFiiKmte8Mm2oxkv_o

 

ぼくも色々、発信もしたいのだが、家で執筆している。2年前の香港での3ヶ月のレジデンスをまとめている。一冊の本になりそうな勢いだ。家に引きこもれる機会は、執筆のチャンスかもしれない(ヒンデミットの伝記を読んでいたら、ナチスに上演を禁止されながら、本を執筆するチャンスととらえて、執筆をしたりしている)。

 

2年前の香港の出来事を整理するのは面白い。施設にあった温水プールの温度が34度で水深が1.3mだったことは忘れていた。そして、i-dArtで知的障害の人々のための美術大学をやる中で、人文科目として「格差と分配」に関するワークショップの話も忘れていたが、本当にいい。

 

格差とシェアに関する授業では、教室内でくじびきで食べ物が配られる。チキンが当たる人、おやつが当たる人、何ももらえない人。その後、どうするか考えて、シェアして食べたら、みんながハッピーになる。この授業の翌週に、実際にお弁当をホームレスの人に届けに行く授業をする。

 

この授業は、障害者に限らず、全ての人が受けたい授業だなぁ、と思う。

 

JCRCという巨大福祉施設は、日本に類例がない特殊な場所だ。2年前に香港に着く前に、ぼくはウェブサイトや動画を見て想像していたが、実際に着いてみて、全く想像を絶した環境で驚いた。だから、ぼくの香港レジデンスがいかに特殊な状況であったか、そして、その特殊な状況の中で、何が達成されたのかを、まとめていきたい。

 

今日も、ホルストの編曲を少ししたり、相撲の右四つ/左四つをピアノの奏法に生かす身体技法を試行錯誤したり、いろいろ実験中。今、日本のあちこちで、世界のあちこちで、いろいろ実験している人々がいるんだろうなぁ、その実験がこの後、どう実ってくるのか、それを想像しながら暮らす。

 

明日は、鈴木潤さん、柿塚拓真さんと「音楽の根っこ オーケストラと考えたワークショップハンドブック」に関するトークを行いライブ配信する。その練習を、里村さんとやってみた。いっぱい質問を受け、いっぱい語った。花や葉っぱに目がいく。根っこは隠れていて見えない。でも、根っこがないと花や葉っぱは存在できない。その隠れていて見えない根っこを、見つめ直してみること。音楽教育の場では、かなり大部分は楽譜を読むことと、楽器を演奏する技術の習得、に割かれることが多い。でも、音に表情(ニュアンス)をつけることや、他人と息を合わせたり、ずらしたりすること、こうした音楽の醍醐味は、楽譜が読めなくても、楽器ができなくても体感できる。そういう意味で、即興や創作をワークショップの基本に据える。その上で、参加者が楽譜を学びたければ、楽器を習得したければ、それを学ぶための教室は数多くあるし、それを習得するにはある程度時間がかかる。などなどなど。明日は、もっと色々喋ります。明日21日、20時より以下のYouTubeで配信します。お楽しみに。

 

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