野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

校正祭りが始まる

DVがなくなる日のための「インテルメッツォ(間奏曲)」を、サックス五重奏に編曲していると、別の小品を作曲する依頼が来て、急遽、そちらの曲に着手。方針がかたまる。

 

里村さんが、本の校正が追い込みで、作業大変そうだなぁ、と他人事のように眺めていたら、里村さんがひと段落して、急にこちらが校正祭りに入った。日本センチュリー交響楽団から発行される「音楽の根っこ オーケストラと考えたワークショップ・ハンドブック」のデザインの初校があがってきて、全64ページを見て、ワクワクするし、これは、どう見ても不思議な読み応えのある本だ、と夢中になる。鈴木潤さんとの共著なのだが、潤さんのような踊れるリズムで演奏するピアニストが、現場の実践をこんなに哲学的に語るのかい、と思う。びっくり仰天でありながら、なるほどと納得。のけぞったりするけど、説得力がある。面白いなぁ。

 

校正も時間があると丁寧にできて楽しい。作曲した楽譜なんかも、丁寧に校正していけば、曲の精度があがっていく。どうしても時間に追われて譜面を書き上げた曲とかだと、あとで(時間がある時に)書き直したいけど、「とりあえず」完成というケースもある。再演する時に書き直すとか、出版する時に書き直すとか。そうやって、同じ曲にいろいろなバージョンができたりする。そういうのを、ちゃんと整理しておかなければ、と昔は思っていた。今は、いろいろなバージョンを撒き散らしていいと、思っている。特に、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」という途中が失われていたり、いろいろなバージョンが残されている作品を、昨年舞台化する作業をして、その思いは強くなった。だから、「とりあえず」作品を発表し、「とりあえず」出版するけど、改訂したくなったら、改訂するし、いろいろな版があっていい。自分の作品が流動的であることが生きていることと思う。だから、完成させるために校正するというよりは、「とりあえず」現在のベストを見つけるために校正する。でも、見落としないように、要チェック!!