野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

「ホエールトーン・オペラ」から15年

ヒュー・ナンキヴェルとの「ホエールトーン・オペラ」。今から15年前の2004年に、日本で第1幕、イギリスで第2幕を作り、14年前に日本で第3幕、イギリスで第4幕を作った。あの当時のヒューと野村の共同作曲のノウハウが詰め込まれた48のシーンを、15年経ってヒューと大阪でやるのは感慨深い。と同時に、そんな過去の自分たちの成果に甘んじるのでなく、全く新しいことにチャレンジすればいいのに、という気もしていた。だから、阪急電車に乗って、曽根駅に向かう道中、「ホエールトーン・オペラ」を如何に解体するか、今日しかできないことに取り組むんだ、という気持ちを高めて向かった。

 

ワークショップが始まると、ヒューは自己紹介を始めると同時に、いきなり法螺貝を吹き始め、みんなに真似をさせ、気がつくと、そのまま「寒い」と言い始めて、それは、「ホエールトーン・オペラ」の第1幕の第1場の「寒い」だと、ぼくにはわかった。そして、手遊びして後、ぼくにバトンタッチしてきたので、ぼくも「ホエールトーン・オペラ」の題材を導入の活動にすることにした。第1幕の第4場の「どうやって実がなるの」で、参加者みんなで声の偶然のハーモニーを遊ぶ。それを受けて、ヒューが第1幕の第5場の「バナナケーキレシピ」をやり、みんなで言葉のアンサンブルを楽しむ。そろそろ楽器をやりたいと思って、ぼくが「鍵盤ハーモニカイントロダクション」をやって後、即興で合奏。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、ギター、トロンボーンクラリネット、鍵盤ハーモニカ、ハーモニカ、リコーダー、様々なパーカッション、カズーなど40名ほどの即興のオーケストラ。第1幕第7場の「うさぎが体重計とバレエシューズを持ってくる」を、うさぎのイメージで演奏して後、子どものジャンプする指揮。第1幕第8場の「体重減らそう」が即興で歌われて後、第1幕の第10場「ニュー民謡」をつくる。8分の7拍子になって、4つのアレンジができて、午前の2時間が終了。

 

昼食後に、第2幕第1場の「序曲」に取り組む。これが、声のオスティナート、弦楽器のメロディー、管楽器のメロディー、打楽器チームのベース、の4つが非常に面白い食い合わせになり、カール・オルフとチャールズ・アイヴズとラテン音楽古楽が合体したような見事な音楽になった。あまりにも素晴らしかったのに、ヒューが録音をし忘れたので、この音楽は残っていない。その後、第2幕第2場「すもうガールの哀歌」と、第2幕第4場の「庭にあるもの」第2幕第5場の「Purple Orchid」にあたる3つの歌をグループに分かれて創作。ボーンマス交響楽団の音楽家、日本センチュリー交響楽団の音楽家が加わっているので、それぞれのグループがとても楽器的にも充実。その時、3つのグループのどれにも加わらずに楽器で自由に遊んでいる小さい子どもたちが3人いたので、グループ活動は音楽家たちに委ねて、ぼくは3人の子どもとのんびりと遊んだ。3人の子どもたちと一緒に、3つのグループを巡回し、子どもたちと仲良くなった。旋法的な「なみだ」という哀愁ある歌、日本人だけで英語のみの歌詞で作った「マジカルメディスン」、そして、イギリス人も歌えるように考えたアクションがいっぱい入った「にわにわにわとり」の3つの歌が、本当に面白い。第2幕第6場の「魔女の呪文コケラトイ」をやって、魔法のブランケットを使って遊ぶ。子どもたちが大はしゃぎ。第2幕第7場の「魔女の魔法」を楽器で渋く演奏して後、第2幕第10場の「フィナーレ」を賑やかに演奏。午後の2時間半もあっという間。最後に10分残ったので、アンコールで、今日やった曲を3曲だけやってみた。「にわにわにわとり」と「魔女の魔法」「フィナーレ」。

 

15年前にヒューと一緒に作った音楽を、こうして15年後にワークショップで再創造してみて、その後の15年間にお互い色々経験してきたので、15年前よりも自由度が増していると感じた。お互いの原点を確認しつつ、信頼し合って、どんどん創作していけること。さらには、15年前よりもお互いへの理解が深まっていると感じた。そして、参加しているメンバーも、とても魅力的な人たちで、ヘトヘトに疲れたけれども、本当に楽しい時間だった。

 

明日も丸一日!ヒューとの4日目が待っている。