野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

だじゃ研とだんだんたんぼ

「だんだんたんぼに夜明かしカエル」東京公演の1日目。昨年から練習に練習を重ねてきたメインキャストに加えて、直前で加わったゲストたちがいた。立教大学の学生/卒業生が3名、だじゃ研(=だじゃれ音楽研究会)が20名弱。練習に練習を重ねて練り上げられた舞台に、ほとんどリハーサルがなしで上る。だじゃ研に関しては、当初、野村と一緒に演奏ブースがあり、そこで野村の指示で演奏する役になると想定していたが、ほとんどリハーサルができない状況でも、佐久間作品は、即興的に有機的な関わりを求めてくる。この人たちは、単なる楽隊としてでもなく、脇役ではなく、とても重要な存在として舞台にいなければいけないという難題を与えられた。そうする状況に臆することなく前向きに取り組んでいること、それは、大変勇気づけられるものだと、ぼくは感じた。あの短時間でアマチュアのグループに、あれだけのパフォーマンスを要求し、それを観客の厳しい視線の前に晒すこと。それは、過酷かもしれない。本番前に、「皆さん、大丈夫ですか?不安はないですか?戸惑っていませんか?」と聞くと、「今のところ楽しんでいます」との答えがかえってきた。そして、「野村さんとやる時は、いつもこんな感じだから、慣れてます」とも言われた。ああ、ぼくは、普段から無茶振りをし続けてきたのか。そして、だじゃ研は、こんなに寛容で柔軟な音楽サークルになっているのか。

 

来年には、だじゃ研と共に、「千住の1010人×2」を開催する予定だ。彼ら/彼女らの成長があって、第1回の時とは比べ物にならないくらい、だじゃ研が力を発揮するだろう。それが楽しみだ。

 

2014年の第1回の「千住の1010人」に急遽、インドネシアからの来日アーティストのサポートスタッフとしてお願いした佐久間新さん。そのままコンサートでダンスで出演してくれたのが、だじゃ研との出会い。5年経って、彼の大切な東京での舞台で、佐久間新とだじゃ研がこうして再会したこと。嬉しい一夜だった。

 

公演中、ぼくはピアノを弾く。業者からレンタルした普通のヤマハのピアノ。でも、今週、十和田で色々な家庭のピアノを弾いた体験を持って、ピアノを鳴らそうと思った。あの十和田の色々なピアノに向き合う時の気持ちで、ピアノの特徴を探る気持ちで、ピアノの響きを聞こうと思った。だから、ここは佐久間公演でもあるけれども、十和田でもあった。

 

そして、途中では、さいたまトリエンナーレと個人的にシンクロする時間もあった。色々なところでやったことが、多層的に重なり合っていく。世界はそういう風に、重層的で、世界の全部を見ることができないように、舞台の全部を見ることはできない。

 

まだ、いろいろ感想もあるけれども、今日はこの辺で。