野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

爆発ピアノ君とノリノリちゃん

香港での日々も今日で、1ヶ月半。3ヶ月の滞在も、明日が折り返し地点です。ああ、もう半分かと思うと、残りの時間がそんなに長くないなぁ。のんびりもしてられないなぁ、と思うわけです。今ぼくが創作している「點心組曲」とは何なのかが、JCRCやi-dArtの方々に理解できるとは思えないし、口で説明しても、よっぽど勘がいい人でも理解できないと思うので、とりあえず、譜面と言うか企画書というか、できるだけ見た目で分かるようにしていかないと、イメージできないだろう、と思い、これからの数日間で、今までのセッションの経緯を英文でまとめることと、既にある素材を楽譜化すること、をやることにしました。そうすると、既に50ページ以上の物ができるはずです。実際に目に見える形にして、球を投げないと、次の展開に向けての議論の場も作れないと思うし、そろそろタイムリミットなので、これから次々にアクションを起こします。ということで、午前中は、第1楽章の過去9回のセッションの経緯を手短に英文で書く。できるだけ短く書いても、既に2ページ。

JCRCのロビーで集合して、香港理工大学までメキシカのダンスクラスのメンバーとバスで移動。ダンスチームのみんなは、ぼくを仲間として迎えいれてくれ、手をつなぐし、隣に座らせてくれる。バス旅行だけで、みんな楽しいんだなぁ。香港理工大学のホールの楽屋に行くと、爆発ピアノ君が衣装を着ている。おおっ。彼は、今日は演劇で出演するらしい。ぼくの顔を見ると大喜びでやってきて、ダンスチームの楽屋までぼくを案内してくれる。ありがたい。ダンスチームは、ユニフォームの黒いTシャツに着替える。ぼくも着替える。驚いたことは、舞台でのリハーサルは一切なし。ぶっつけかーー。

会場には、JCRCの他のセンターの利用者さん、東華三院系列の他の施設の人、利用者さんの家族などが多数いる。「ドラムカーニバル」のノリノリちゃんなど、ぼくとのセッション経験者が客席に何人もいた。

演劇に出るメンバーは、爆発ピアノ君の施設の利用者さんたち。爆発ピアノ君が初めて爆発した日、最初にキーボードの周りに集まって、即興で歌を作ったことを、すっかり忘れていたのだが、衣装を来たお姫様が突然、ぼくの顔を見るなり、その時の即興の歌を歌いだした。2週間前の歌、ぼくは忘れていたのに、彼女たちは覚えているんだ、と反省。

演劇は、普通に、施設の利用者さんとスタッフによる和やかなお芝居だった。広東語を理解しないぼくにとっては、みんな出てきて喋って何か芝居しているんだろうなぁ、くらいな感じだったのだが、爆発ピアノ君だけは、表情が語り、仕草が語り、ノンバーバルに、観客に訴えかける。ああ、彼は単なる爆発ピアノではなく、存在自体が表現者なのかもしれない。そして、注目されるほど力を発揮するタイプに違いない。

ダンスチームの出番になった。ぼくは、ダンスチームの演目の最後だけ出るので、舞台袖から、見ていたのだが、メンバーの一人は、ぼくの姿を見つけると、なんと舞台袖にやって来て、ぼくの手を引っ張って、舞台上に連れ出した。彼にとって、踊ることはショーを成立させることではなく、仲間と喜びを分かち合うことなのかもしれない。ぼくは、知らない振付のダンスに、即興で加わる羽目になった。

ぼくが舞台に連れ出されたからかどうかは分からないが、気がつくと、客席から舞台の上に、ノリノリちゃんが登ってきて、凄い勢いで踊っている。みんなは決まった踊りを振付られているので、ぼくだけ自由な立場だから、ノリノリちゃんの動きにも合わせたり、みんなの踊りを真似したりして踊った。今日は、爆発ピアノ君とノリノリちゃんが凄かったなぁ。どちらも、自分が「點心組曲」で縁があるから贔屓目かもしれない。いや、客観的に見ても、二人が突出していたなぁ。

その後、思い立って、中国楽器の店があると作曲家のコンユが言っていた駅に行く。そして、なんとなく勘で行ったら、中国楽器が山ほどある店に辿り着いた。正解。小物の中国打楽器ばかりを、七点購入。明日からのセッションに使おう。

戻って、第2楽章「ドラム・カーニバル」の過去6回の経緯を英文で書く。やっぱり短く書いても2ページになった。