野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

福寿苑でのうたう図書館

豊橋駅から渥美鉄道。三河田原へ。愛知大学の学生と合流。田原市図書館の吉田さんの車で、老人ホームの福寿苑へ。図書館15周年の企画。「うたう図書館」に向けて。本日は、お年寄りの語りや歌声などの声を録音ことが、大きな目的でもあった。お年寄りたちに、とりあえず、「たー」とか「はー」とか「らー」と声を出してみたり、大学生にやってもらったり。「みかんの花咲く丘」はみんなで歌えるらしいので、歌っていただいて、それに、野村が鍵ハモで伴奏したり、大正琴で伴奏したり、ピアノで伴奏したりして、大学生はお年寄りに接近して、録音したり。99歳の方がおられたり、皆さんの年齢を伺ったり、15年前のことを語ってもらうなど、色々なことが起こった末に、民謡を歌い始めたら、木曽節、かわさき、花笠音頭、炭坑節、なごや音頭、春駒、などなど、次々に張りのある声で歌う。一方、それらの歌を大学生たちが知らない、という衝撃もあり、大学生に「木曽節」をお年寄りが教える講座に変わったりする。若者に教えるとなると、やる気の増すお年寄りたち。お返しに、大学生たちにも得意の曲を一人ずつアカペラで歌ってもらう。中国からの留学生は、中国語で美声を披露した。図書館の職員、大学の教員も歌った。ぼくは、相撲甚句数え歌を歌う。面白い音源がいっぱいとれた楽しい時間でした。

その後、学生たちとの交流、卒業生たちとの再会などもあって後、京都に戻り、「かずえつこと 即興のための50のエテュード」no.33「むかしばなし」を作曲。「むかしばなし」になったのは、もちろん老人ホームの影響。そして、深夜になって、里村さんとJACSHA(日本相撲聞芸術作曲家協議会)の次年度に関する打ち合わせの長電話をして、あらためて相撲のこと、双葉山のことを色々考える。ぼくは、土俵際で切羽詰まった状態で力を振り絞る作曲ではなく、脱力して自由自在な作曲をしたい、と思っているようで、それは、非力な双葉山が、最初は土俵際のうっちゃりなどで逆転勝ちしていたところから、最後には、脱力して力を使わない相撲の境地に達していたことから、そう思うようになった。だから、脱力していれば、どんなに次々に作曲しても、力を使わずに、曲がどんどん書けるはずで、その境地を目指すために、どんどん書いてみよう、と最近は思っている。

明日は、ヴァイオリンとバリガムランの曲、ヴァイオリンとクラリネットトロンボーンコントラバスとピアノの5重奏、そして箏の即興のための曲、3曲書くつもり。脱力して作曲すれば、書けるはずなのだが、その境地にはほど遠く、全然、時間が足りないと思ってしまう。