野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

砂連尾ノート

映画「幸福は日々の中に」を観に行く。鹿児島の障害者施設しょうぶ学園を舞台に、入所者たちのアートや音楽や生活が描かれるドキュメンタリー。冒頭の音楽がフレッド・フリスである以外は、常にしょうぶ学園で奏でられている音楽が、映画の背景に流れている。一音一音、本当に説得力のある音楽。音が活きている。パンフレットに寄稿したので、この映画、パソコンの画面上では何度か見ていた。しかし、映画館の大画面で鑑賞する体験はやはり違った体験だった。あっという間に時間が流れて、びっくりした。

来週から、城崎国際アートセンターでのレジデンスが始まるので、楽器の積み込み作業をした。

夜はダンスの男、砂連尾理さんと語り合う。砂連尾さんは、質問の男でもある。気がつくと質問を続け、ぼくが答える構図ができあがり、砂連尾さんは、ぼくの言葉をノートにとっている。不思議な人だ。質問に答えているうちに、中学生の頃に愛読していたアントワーヌ・ゴレアの「現代音楽の美学」の言葉が思い出されて、砂連尾さんの前で音読。その本の最後の大好きな文章を音読していると、泣きそうになる。1953年のダルムシュタットでのメシアンのレクチャーについてのエピソードと、それに対する著者の所感だが、それから30年後の1983年頃、名古屋の中学生のぼくはこの本を読み、それからさらに34年の月日が流れて、ぼくは砂連尾さんと語り合っている。