野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

日本センチュリー交響楽団The Work

本日は、日本センチュリー交響楽団と行っている音楽プロジェクト「The Work」の記録映像のためのインタビュー撮影でした。2年目を迎えるプロジェクトに関して、色々コメントを求められてコメントしました。

この「The Work」は、オーケストラと就労支援のNPOが共同で行っているところが、独特な部分で、実際のワークショップでも、非常に面白い現象が起こっていましたし、生まれてきた音楽も大変美しく面白いものだった、と思っています。就職活動で日々忙しい若者と、連日の演奏で日々忙しいオーケストラの楽団員が共に時を過ごします。両者とも、忙しいのですが、このワークショップの中では、次々にやることが与えられるのではなく、「さあ、今日は何をしましょうか?」と野村に尋ねられる。何もしなくてもいいし、してもいい時間。何をしてもいい。何をしなくてもいい時間を過ごします。そこで、随分と色々なことが起こっていたわけですが、その豊かな時間に起こったことを、音楽と就職活動だけの視点だけで語るのは、甚だもったいないと思います。このことを、全然別の視点から語れる別の分野の人との交流の機会を設けていった方が、意外な展開を見せる気がします。そして、そのような意外な展開の種は、この2年で結構蒔けた、と思っています。

オーケストラは存続をかけて、何とか仕事を開拓しようとしています。若者たちも、自分の職を決まるように就職活動をしています。それは、何かに急がされているような感じがします。この国の総理大臣も、何に急がされているのでしょう?焦っています。焦った状態が伝染して、慌てる人が多くなっています。立ち止まって、オーケストラって何?仕事って何?音楽って何?と一歩一歩確認しながら、丁寧に進めていくことが、何より肝心なんだと思います。すぐに、メディアに取り上げられることよりも、すぐに助成金獲得に結びつくことよりも、すぐに内定が決まることよりも、すぐに法案を可決することよりも、自分たちの足下を丁寧に見つめ直せる時間を持つことが、何より大切なのだ、と思います。

「The Work」に関しては、就職に効果があるか分からないのに、面白そうだから参加したい、という人々がどんどん増えていくようなプログラムにしたい、と思いました。楽しいことをやりましょう。今日のインタビューを含めた映像は、秋頃にウェブで公開になる予定だそうです。