野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

時事問題でリズムをつくる子ども達

DMが届きました。墨田川アートフェスティバルで、「餅つきアンサンブルズ」と書いてあって、大友良英+EAT&ART TAROと書いてありました。ぼくも11年前に、オーケストラ+餅つきの曲を作曲しました。YCAM開館イベントで発表した「しょうぎ交響曲第3番『開館』」です。あの時は、餅つきの音色に合わせてシンバルが鳴るところから始まったのですが、この「餅つきアンサンブルズ」は、どんな感じなのでしょう?似た発想の企画が出てくるのは、嬉しいです。

http://www.ycam.jp/shop/cd/post.html
http://asahiartsquare.org/ja/schedule/post/1281/

12月23日のコンサートに向けて、「京阪46駅」の譜面をつくる作業をして後、今日も栗東芸術文化会館(さきら)へ。ジュニアオーケストラとのワークショップ2日目。昨日は、「音遊び」、今日は「作曲」とテーマが違うが、実は昨日の延長線上に本日があります。

今日は見学に、地域創造のプロデューサーの児玉真さんや、マリンバ奏者の宮本妥子さんらがおられました。久しぶりの再会でした。何でも、若い打楽器奏者たちを育てるプロジェクトをやっていて、本日はその講座の日らしく、わざと野村ワークショップの日に合わせて企画したとのこと。

ということで、2時間の作曲講座は、以下のように進みました。

1)昨日やったことのおさらい
2)昨日作ったフレーズの続きをグループごとに創作
3)それぞれを発表
4)これをつなげて、演奏
5)エンディングをつくる
6)タイトルを決める ⇒「さきら 新たなる旅立ち」
7)別の曲の題材探し ⇒「くしゅん」、「集団的自衛権」、「号泣会見」、「3分クッキングまさかの失敗」
8)言葉のリズムを決めて、声のアンサンブルに
9)それを楽器でやってみる
10)各パートごとに8音決めて、8音のハーモニーをつくる
11)それを合わせて響かせて、どこの音を変えたいか探してみる

「さきら 新たなる旅立ち」と未来へのタイトルを提案し、「集団的自衛権」、「号泣会見」など時事的なネタも掲げてくれた子ども達に、感謝。これが、なかなかカッコいい曲になりましたし、子ども達と推敲しながら考えたハーモニーも、なかなか面白いものでした。ぼくは、作曲という行為と民主主義について、常に考えてきています。一人の作曲家が世界を支配するのではない「共同作曲」というテーマに取り組んでいる理由のことを、子ども達に語りました。共同作曲の場で、ぼくは特権的に振る舞うことは多いです。でも、自分が特権的な立場だと自覚して、演奏者の声に耳を傾けることを忘れないことが大切です。それが、作曲家と演奏者の間の対話です。政治家も同じであって欲しいと思います。議員は国民の声に耳を傾ける努力を忘れないで欲しいと思います。選挙をすれば民主主義ではないと思います。特権的な立場を自覚しつつ、耳を傾けられる人。自分の立場や主張を連呼するだけでなく、耳を傾けられる人であって欲しいと思います。少なくとも、そうしたことをぼくは指向しているので、「千住の1010人」でも、強いリーダーではなく、少しでも耳を傾けられるリーダーを目指しました。

昨日と今日のワークショップの内容を踏まえて、年始にはオーケストラの小品を作曲するつもりです。それをジュニアオーケストラが3月15日に演奏してくれるのが大変楽しみです。野村のオーケストラ作品は、実は少ないのです。

1)ピアノと管弦楽のための「だるまさん作曲中」(2001)
2)しょうぎ交響曲第1番「ちんどん人生」(1999/2003)
3)しょうぎ交響曲第2番「どこ行くの」(2003)
4)しょうぎ交響曲第3番「開館」(2004)
5)「アコーディオン協奏曲」(2008)
6)さきらジュニアオーケストラのための新曲(2015)